こんにちは。
現役MRのリョウタです。
国内の医薬品市場は2016年にピークアウトしてから縮小に向かっています。
2019年は一時的に前年比で2.8%増加しましたが、キイトルーダなどの高薬価の医薬品の成長があったためで、それらを省くと実質減少しています。
マクロ経済や人口動態からみて、これからも日本国内のマーケットが拡大する可能性はほぼゼロですので、海外に活路を見いだせない企業は成長できるはずがありませんが、その研究開発力や日本での基盤に価値を感じて海外企業に買収されるケースも出てくるかもしれません。
それは日本で名前を聞くような欧米のメガファーマではなく、アジアの新興製薬企業という可能性もあると思います。
特に、今成長著しい中国の製薬企業に日本の中堅メーカーが買収される・・・という、今まででは考えられなかったことが起こる日が来るのではないかとひそかに思っています。
内資系大手は順調も中堅以下はジリ貧
「内資系中堅製薬会社MRは海外売上高比率に注目してますか?」でもお伝えしましたが、内資系中堅製薬メーカーの多くは岐路に立たされていますね。
国内の製薬メーカーは高齢化社会と国民皆保険制度を背景に成長を続けてきましたが、この前提が両方とも崩れかかっているため今後は勝ち組と負け組に大きく分かれていくと予想しています。
そのカギとなるのが、ブログで何度もお伝えしている「海外売上高比率」です。
日本のマーケットが急速に縮小していくんですから、海外でビジネスができない企業は成長していけるはずがありません。
内資系大手はそのことを十分に理解していて既に手を打っているので、少しずつ海外売上が伸びています。
2019年通期の決算をみると、内資系大手の海外売上高比率は以下のようになっています。
大手の中では第一三共が38.1%、小野薬品が30.6%と少し低めですが、両社とも前年同期に比べて10%以上伸びています。
エーザイは59.8%、アステラス製薬は73.5%、シャイアーを買収した武田薬品はなんと82%と既に内資系企業とは思えないほど高い海外売上高比率を持っています。
それに対して、内資系中堅はパッと見で大手と非常に大きな差があることがわかりますね。
この中だと海外売上がほぼゼロという会社が半分以上あるのには驚きですね。
これまで、国内でそこそこ売れる製品が2つか3つあったことであぐらをかいてしまい、海外進出が遅れてしまった代償が今後大きく出てくるのではないかと思っています。
日本では厳しそうなゼリア新薬も海外での売上が伸びてきており、内資中堅の中では頑張っていますね。
ただそれ以外の海外でビジネスをする気のない中堅企業は人口減少、医療費抑制の国内だけでどう利益成長していくのかわかりません。
中期計画で海外展開を描いている企業もありますが、今からスタートして挽回できるものなのでしょうか。
私が投資家なら今の時点で海外売上がない会社の株式を長期で持ちたくありませんね。
海外に進出する中国のバイオ製薬企業
内資系中堅の製薬メーカーが国内であぐらをかいている間に、経済成長率が高いアジアの新興国の製薬メーカーも自国で着実に成長しています。
特に、GDPでは2010年に日本を抜いて以来、現在では日本の約3倍と凄まじく経済成長している中国の製薬メーカーはすでに欧米の当局に承認されるような新薬を開発できるようになってきています。
ほんの10年程前まで、原薬を作ったり海外メーカーの長期収載品や後発品を自分の国で売るのがやっとだった製薬会社が、今では先進国のメガファーマも顔負けの製品を開発する力をつけてきているんです。
たとえば、上海君実生物医薬(Shanghai Junshi Biosciences Co Ltd)は2018年に中国国内の企業としては初の免疫療法薬Toripalimabを上市しました。
免疫療法薬はSintilimabも中国で上市されていて、こちらは信達生物製薬(Innovent Biologics, Inc.)という企業が米国のイーライリリーと共同で開発し、中国の国家薬品監督管理局(NMPA)に承認されました。
さらに中国の最大手クラスの恒瑞医薬もCamrelizumabを中国で上市し、中国ではオプジーボやキイトルーダに加えてこれら3製剤の免疫療法薬が使用可能になっています。
ToripalimabやSintilimab、Camrelizumabはともに欧米でも開発治験が進行していて、上市も間近のようです。
そして、百済神州(BeiGene)のZanubrutinibはアメリカのFDAに画期的治療薬としての指定を受けています。
実際にがん免疫療法の分野では中国は、特許出願件数や論文発表数でアメリカ、EUに次いで3番目に多い国であり、日本をはるかに凌駕しているのです。
また、歌礼生物科技(Ascletis Pharma Inc.)という企業はロッシュと共同開発したC型肝炎治療薬のGanovo®(Danoprevir)とRavidasvirを中国で初めて上市し、Ganovoは米国でも既に上市されています。
これらのように、少し前までビタミン剤や抗生物質を販売するのがやっとだった中国の製薬企業はドンドンと力をつけて、今ではFDAに画期的治療薬の指定を受ける薬剤を開発することができるようになってきています。
中国には14億人の人がいて、あちらも既に高齢化の問題が迫っていますので、医療の発展は国家の重点課題となっています。
このままでは、中国の会社が日本進出の足掛かりに日本の製薬メーカーを買収するということになっても何ら不思議はなくなってしまいます。
おそらく、この勢いの差が逆転することはありませんので、近い将来本当にそうなると思いますよ。
電機業界の次は製薬業界かもしれませんね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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