新薬を扱うMRの価値は、新たに承認された新薬の立ち上げを成功させ、販売を軌道に乗せることに集約されてきています。
これは、競合品との差別化が微妙で難しいシェア・オブ・ボイス型営業の製品の全盛期から、個々の製品特性が強く提案型営業が必要なスペシャリティ領域の製品の全盛期へ時代が変わったことによります。
これにより、今後は提案型のMR活動で成功経験を持つ人材の価値が高まってくることが予想されます。
目次
MRを取り巻く現在の状況

日本国内のMR数は、2013年の65800名をピークに近年は減少傾向が顕著です。
現在、医薬品業界には様々な転換期が訪れており、各製薬企業も適正なMRの数や業務の質について模索中です。
もともと医療用医薬品という製品の特性上、非常に高い倫理観とコンプライアンスの遵守が求められる業界です。
ゴリ押しや根拠の怪しい営業トークはご法度です。
この転換期によって日本のMRの将来性についても今までとは様子が異なってきました。
実は、私もMRの将来については決して楽観的には考えられず、逆にこれだけの数のMRの必要性に疑問を感じています。
もちろん、MRという仕事自体はそう簡単に無くなりませんが、大都市圏の一部ではMR不要論を唱える医師や薬剤師も出てきていることを考えると、製薬企業側も必要とされるMRの教育について本気で考えなければならない時期に来ているのは間違いなさそうです。
MRの将来が決して楽観視できない理由

MRの将来が楽観視できない理由についてまとめてみました。
政府による医療費、特に薬剤費の削減政策促進
接待攻勢などの禁止による営業社員の必要性の低下
シェア・オブ・ボイス型のプライマリー領域製品の
新薬減少でMR数の減少が必至
IT技術の発展により、医療関係者はMRからの情報よりも
偏りがなく正確な情報をタイムリーに入手しやすくなっている
コントラクトMRの市場での確立によって新薬立ち上げ時には
低コストでMRが確保できるようになった
これからの時代、IoT(モノのインターネット化)やAI(ロボット技術)などIT技術の猛烈な発展によって、石油革命時における石炭採掘業のようにほぼ不要になってしまう仕事も出てくるはずです。
正確な医薬品の適正使用情報をタイムリーに伝達するためには、MRが口頭で伝えるよりもIT技術を使う方が確実性が高いのではないか?とふと思うのは私だけでしょうか。
しかしMRは生命に関わる医薬品を扱う業種であり、営業業務だけではなく、副作用情報やその他製品取扱情報において医療関係者に迅速に提供しなければならない情報もありますので、営業職の中ではこのようなIT技術にすぐには取って代わられにくい職種でしょう。
ただ、IT技術の進歩は凄まじく早いので変化に敏感になっておかないといけませんね。
いずれにしろ現状の65000人も必要なくなることは間違いなく、今後もMR数は減少の一途を辿るでしょう。
どこにでもいるMRはコントラクトMRにとって代わられますし、雇用され続けることは難しくなっていきます。
その他大勢の他人やIT技術に代えが効かない価値ある人材になるべく、常に自己研鑽していくしかありませんが、その方法として効果的なのが「転職」なのです。
MRが転職すべき3つの理由

生涯年収のアップにつながる
転職をすると年収は100万円、いや前職の会社によっては200万円のアップも珍しくないですし、実際に私も3回の転職のうち2回は100万円以上年収がアップしています。
比較的若いうちに転職してこのような給与アップをしておけば、仮にその後同じように昇給したと仮定すると、10年では2000万円、20年ではなんと4000万円と生涯年収で大きな差となります。
さらに、外資系企業の場合は実力主義の色合いが濃く努力次第では昇給が早い可能性が高いです。特に内資系中堅の企業にいる場合は、向上心さえあれば外資系企業に転職した方が良い可能性は極めて高いです。
転職経験自体がMRとしての価値向上になる
当時よりも今の方がMRの転職に関しては壁が低くなっていますが、それでも転職に抵抗を感じる人もまだ多くいます。
これは転職活動中にとある会社の人事部の方が言っていたのですが、「これからの時代は日本でも、ある程度の年齢でそれなりのポジションに昇格していなければ、転職もしたことがない人は向上心がなく、市場価値が低いという見方で見られる」というお話でした。
私も以前から全く同様の予測をしていたので、人事部の方に言われて驚きました。
具体的に自分のキャリアについて目標を定め、その目標に早く近づくために努力していくと転職をするべき機会が出てくることが多いのです。
また、給料アップで転職するということは、採用した会社から今よりもっと高い価値があると認められたということなのです。
1つの会社に長く勤めていても、会社は価値が向上している社員に対してタイムリーに年収の再評価をしてはくれませんよね。
最も大きなコストである人件費はできれば低く抑えたいですからね。
ですので質の高い仕事ができるように成長した社員も他の社員と大差ない昇給・昇格のみで、価値の上昇に年収がついてこない人が出てきてしまうのです。
最新の新薬プロジェクトに携わることができる
このご時世に積極的にMRを採用している会社は新規領域で画期的新薬の上市を控えている会社がほとんどです。
そのような会社に採用されて新薬上市のプロジェクトに参画することで、MRとしての知識や経験値が向上することは間違いありませんよね。
そうすると、次に同じ領域で新薬を開発している会社にとっては、既に経験値が高いMRが必ず必要になってきます。
それが勝手に転職希望者が集まってくるような有名企業でなかった場合には、給与やポジションなどでかなり好条件の提示をするケースもあるのです。
中には、管理職待遇で入社したり、入社後早い段階(1~2年くらい)で管理職に昇進する人も珍しくないです。
このように、戦略的に転職することによって新薬プロジェクトに携わりながら自身のMRとしての価値も高めていくという戦略をアグレッシブな方には特にオススメします。
転職せずにこのままいくとどうなる!?
逆に、既存の収載品で継続して利益を上げていくことはどの会社にとっても困難になってきています。
製薬企業は競合品と明確に差別化できる画期的な新薬を定期的に開発し上市していく必要があるのです。
それができていない企業では最も大きなコストである人件費を削減するためリストラを行います。
つまり、新薬が発売されずにリストラを行っている会社はまさに「負のスパイラル」に入っていると言えます。
まだ、パイプラインに画期的新薬があり数年耐え忍ぶことで承認が期待できるのであればいいのですが、それも見えていないのであれば、長期に負のスパイラルに陥る可能性が高いです。
そうなる前に自らキャリアアップ戦略を立てて積極的に動くべきです!
さいごに

どんな人でも、何が何でも転職した方がいいよ!ということではありませんが、自身の今後のMR人生を考えてみて、今いる会社で順調に昇給・昇格していった場合の自分の姿や収入額を予想してみて下さい。
先輩社員や上司を見ると分かりやすいですね。
また、所属する会社の将来性も考えなくてはなりません。
継続的に利益を上げ成長していける会社ですか?
製品ラインナップや画期的な新薬の開発は進んでいますか?
ものまね新薬や長期収載品だけで会社が安定成長できる時代は終わり、ジェネリック薬が普及することで今後は日本でも間違いなく企業の淘汰が進んでいきます。
そういう会社にいたらどんなに頑張って成果を上げても給料は上がりませんし、どんどん新薬が発売される会社と比べると経験値に歴然とした差が出てしまいますのでMRとしての価値も低く見られてしまいます。
更にそれでも転職しないでいると、向上心が低いという印象を持たれ、転職時に内定を取りにくくなってしまいます。
市場価値を上げるため、収入を上げるためというのはもちろんですが、根本的にはMRとして長く生き残るために転職という選択肢について誰しもが考えるべき時が来ているのです。
転職について普段からエージェントと情報交換しておくのが良いと思います。
コメント