こんにちは。
現役MRのリョウタです。
サラリーマンなら誰でも、自分が所属している会社の将来が気になりますよね。
通常なら開発している新薬とか、既存製品の売り上げの伸びによって会社の成長を予想するものだと思います。
会社のことは社員だとよくわかるので、「2~3年後には有望な新薬が発売になるから会社も大きくなりそうだな」とか「自社製品がガイドラインの第一選択に推奨されたから今後数年は安泰だ」など、業績が成長しそうなのかどうかは会社の外にいるよりも把握しやすいです。
だから私がここで業績から企業の成長を予想してもあまり面白くありませんし、四季報以上の情報を集めるのはなかなかむずかしいものです。
そこで、今回は長期的な株価の推移から、その会社に所属するMRの将来を予想してみようと思います。
資本主義的な考え方をすると、株式上場企業は株主の利益のために存在しているのですから、長期的に見て株価が上がっている会社は株主の利益を確保しているため、従業員の給料を上げることができますし、将来にも希望が持てます。
逆に株価が長期的に見て下がっている会社は、株価を上昇させるために経費を削減しなくてはなりませんので、MRを含む社員の活動経費は少なくなりますし、給料は上がりにくくなりますし、リストラをする可能性も高くなります。
今回は内資系大手製薬会社の長期的チャートを比較して見たいと思います。
内資系大手製薬会社の長期株価推移
2019年の国内製薬会社売上ランキングでトップ3だったのは、下記の会社でした。
1.武田薬品工業
2.大塚ホールディングス
3.アステラス製薬
これらの会社の長期的な株価の推移を確認してみたいと思います。
株価推移はおおよそ2002年以降の株価チャートを月足で表示させています。
「月足」というのは、表示されているローソク足の1本がひと月の値動きを表しているチャートのことを言います。
緑色のローソク足は陽線(始値より終値が高いことを表す)、赤色のローソク足は陰線(始値より終値が安いことを表す)を表しています。
武田薬品工業
はじめは国内最大手で、日本を代表する製薬会社である武田薬品の株価チャートです。
2010年頃まで無借金経営で優良企業の代表格のような会社でしたので、さぞ株価もまっすぐに伸びているのかと思われがちですが意外にもそうではなく、直近の株価もここ18年間ではかなり安い水準です。
2000年頃に武田薬品の株を購入して保有している投資家は利益が出ていない状況です。
これは、武田薬品が2000年代後半以降、将来のパイプラインを確保するために積極的な買収を行ってきたことが影響していると思われます。
2008年のリーマンショックに合わせて大きく株価が下落していますが、アムジェンの日本法人、米国のミレニアムファーマ、2011年にはスイスのナイコメッド、2012年には米国のURLファーマと立て続けに買収したことも投資家にはさほど評価されず、株価は安値を推移していました。
2012年の後半以降は安倍首相による「アベノミクス」によって日経の株価全体が上昇に転換したことで武田薬品の株価も上昇していますが、2017年末までに日経平均株価が2.6倍程度に上昇しているのに比べると市場をアンダーパフォームしています。
そして、武田薬品は2018年5月にシャイアー買収を発表しました。
シャイアーは非常に有望な会社ではありましたが、7兆円の買収金額に加えてシャイアーが抱えていた負債1.5兆円を合わせて8.5兆円が武田薬品にのしかかるということで、さすがに近年の株価は下落傾向にあります。
ここまでみていくと、将来もなんか暗そう・・・と思うかもしれませんが、私は決してそんなことはないと思っています。
ここ18年の株価をみるとたしかにあまりさえませんが、それより前の1990年代の株価は1000円~1500円くらいで推移しており、2000年には一時8000円を超えるなど大きく成長してきた経緯があります。
日経銘柄の特性として、株価を超長期目線で見ると20~25年で1つのトレンドを形成しているといことがあり、それを考慮すると武田薬品は2000年以降の揉み合いトレンドがそろそろ終わって再び上昇を開始する局面にあるのかもしれません。
シャイアーのパイプラインが複数上市に成功してそこそこの売上を上げるようになってくれば、株価ももう一段上昇に向かってMRも仕事にありつけるし将来も安泰になるのではないかと思います。
大塚ホールディングス
大塚ホールディングスは大塚製薬のほかに大鵬薬品、大塚製薬工場、アース製薬、ニチバンなど多くのグループ企業を有しています。
東証一部に上場したのは2010年12月ですので、株価チャートも上場時からになっています。
超主力製品のエビリファイが特許切れを迎えた2015年と翌年の2016年に大きく利益を落としましたが、株価は大きく下落することなく上昇を続けてきました。
しかし2018年の12月以降株価が暴落し、長期間にわたって続いてきた上昇トレンドが完全に崩れました。
8年間も続いてきた上昇トレンドが崩れたため、業績に関係なく向こう数年間は株価が上下するかもしれません。
しかし、大塚ホールディングスは力強く業績を回復させているため、MRとして会社の将来を悲観することはないと思います。
エビリファイの特許切れによるインパクトが巨大でしたが、持続製剤のエビリファイメンテナで見事にカバーしましたし、サムスカも絶好調です。
アルツハイマー治療薬のAVP-786が治験失敗したことによる影響は若干の不安要素ではありますが、グローバルで好調な製品が複数あることや今後の開発品も潤沢にある今の状況を考えると成長していけるのではないかと思います。
大塚ホールディングス全て合わせるとMR数が2000名ほどいますので少し多い気はしますが、MRの減少は業界全体で起こっていることですのでリストラなどがあっても仕方がないのかもしれません。
株価は向こう数年間どう動くかわかりにくい形状になっていますので、株主はしばらく楽観しづらいかもしれませんが、所属するMRの将来は明るいのではないかと思います。
アステラス製薬
アステラス製薬は営業利益率が高く高利益体質の企業として知られていますし、海外比率も7割と高く、積極的に海外展開を行っている国内でも超優良企業の一社ですね。
2008年以降はサブプライム・ショック、リーマン・ショックのあおりを受けて日経全体と同様に株価が低迷しましたが、2012年後半のアベノミクス発動以降は大きく株価が上昇しており、現在も株価は歴史的な高値の水準にあります。
アステラス製薬も武田薬品と少し時期がずれているものの、同様に20年周期で株価が推移しており、1970~1980年代は株価上昇期、1990~2000年代は停滞期になっており、2010年代は再び大きく上昇してきています。
この流れから予想すると、2020年代も上昇を続けていく可能性が高いのではないかというふうにみえます。
ただ、ビジネスをみると2019年に主力製品の特許切れが相次いでおり、通期の業績はなんとかもちこたえたものの今後は不安が多い状況となっています。
株価的には高値圏の中で下値が切上がってきており、最高値を更新して上昇を目指していく流れなのですが、業績には不安がある。
両方を考慮すると予想がむずかしくなってしまいますが、ここでは株価からの予想を謳っていますので、チャートに正直になるとMRの今後も明るいはずです。
近年、アステラス製薬はMRの削減を行っていますし、支店や営業所の廃止もしています。
これらはやはりパテントクリフ対策だと思いますので、投資家にとっては明るいものの、今年や来年あたりはMRなど従業員にとっては厳しめの年になるかもしれませんね。
MRの削減は所属する会社の業績の良し悪しは関係なく時代の流れですので、ある程度の年齢になっていたらMR一本のままというのはどっちにしても危険なのは間違いありません。
まとめ
ひとくちに国内の大手製薬企業の株価といっても、20年近い長期の推移をみると大きく違っています。
また最近は日銀による異次元の金融緩和によって日経を強く買い支えていますので、大手企業の株価は下がろうとしても下がらないという状況が続いています。
なので、株価と従業員の状況が一致しないことが多くなってきていて、このへんが昔とは違うところなのかもしれません。
株価とMRの将来を結びつけることは困難という結論になってしまいましたが、業績が低迷すると会社のリストラやボーナスカット、昇給率低下などが起こる可能性は高いですので、先行指標の株価を見ておくのは大切かも知れませんよ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
コメント