こんにちは。
現役MRのリョウタです。
先月、米国のナスダックに上場した米国企業にロイヤリティ・ファーマという会社があります。
この会社は今までの医薬品業界にはなかった新しいビジネスモデルで非常に注目を集めています。
巨大な医薬品市場を持つ米国ならではのユニークな会社ですので、株価も含めて是非注目してみてはいかがでしょうか。
ロイヤリティ・ファーマってどんな会社?
6月16日に米国企業のロイヤリティ・ファーマ(ティッカーシンボル:RPRX)がナスダック市場に今年最大規模のIPO(新規株式公開)で上場を果たしました。
まずはこの会社の成り立ちについてご紹介します。
この会社は1996年に、当時投資銀行の銀行家だったパブロ・レゴレッタ氏が設立しました。
レゴレッタ氏は1987年に当時自分の顧客が化学療法薬の特許権に投資していたのを目にし、製薬企業や大学などの研究機関からロイヤリティの一部に投資するビジネスを考えつき、ロイヤリティ・ファーマを設立しました。
近年は高度な開発力が必要となる分子標的薬が台頭してきており、1つの薬剤を開発するためには莫大な資金が必要になります。
巨大な製薬企業でもその資金を捻出することが難しくなる中、小さなベンチャー企業や大学、独立研究機関などが資金を集めるのは年々困難になっています。
そのような新薬開発元はロイヤリティ・ファーマに対してロイヤリティ受領権を販売することで早期に大きな資金を得ることができ、新薬開発を継続することができます。
また、新薬が売上を上げられるようになるまでには、前臨床開発試験から臨床試験、承認申請、承認後はマーケティングや営業などたくさんのリソースが必要になるため、そこそこ大きな企業でない限りそれをこなす資金力がありません。
であれば、良い新薬候補を見つけた段階で現金化したいと思うケースも多くあります。
新薬が売上を上げるプロセスにたどり着く前に知的財産権を現金化する機会を与えてもらえば、その資金を元にまた次の研究を進めることができるというわけです。
ロイヤリティ・ファーマはリスクをとって開発中の新薬候補のロイヤリティ受領権に投資することで、もしもその新薬開発が成功し上市することができれば、その薬剤の特許が切れるまで継続的に売上高に対するロイヤリティを受け取ることができるようになります。
このビジネスのメリットとしては、まず製薬企業のように莫大な研究開発費をかける必要がないということが大きいです。
また、ある程度かたちになってきた新薬候補の一部の特許権を数多く保有することで、1つの薬剤の開発や特許切れなどに対してもそれほど大きなインパクトにならないというリスク分散効果が得られます。
そして、現在の社員は35名と少なく、ほとんどがウォール街で製薬業界に精通してきた元バンカーや証券会社のアナリスト、そして博士号を持つ専門家で構成されています。
世界中にMRを配置する必要もありませんし、マーケティングにお金をかける必要もありません。
非常に合理的で効率が良いビジネスモデルを構築したことで脚光を浴びています。
ロイヤリティ・ファーマのポートフォリオ
ロイヤリティ・ファーマは現在、45品目の特許権を保有しています。
そして、そのうちなんと22品目の特許権がブロックバスターに成長しています。
日本でも製品が発売されている主な製品だけをみても、下記のような製品の特許権を有しています。
製品名 | 主な適応症 | メーカー |
ヒュミラ | 関節リウマチ | アッヴィ |
レミケード | 関節リウマチ | J&J |
シムジア | 関節リウマチ | UCB |
イムブルビカ | 血液がん | アッヴィ/J&J |
タイサブリ | 多発性硬化症 | バイオジェン |
テクフィデラ | 多発性硬化症 | バイオジェン |
エンテイビオ | 潰瘍性大腸炎 | 武田薬品 |
リリカ | 慢性疼痛 | ファイザー |
ジャヌビア/ジャヌメット | 糖尿病 | メルク |
ネシーナ | 糖尿病 | 武田薬品 |
トラゼンタ | 糖尿病 | ベーリンガー・イーライリリー |
オングリザ | 糖尿病 | アストラゼネカ |
イクスタンジ | 前立腺がん | アステラス製薬/ファイザー |
ゲンボイヤ/ビクタルビ | HIV | ギリアド・サイエンシズ |
ミルセラ | 腎性貧血 | ロシュ |
プリジスタ | HIV | J&J |
レボレード | 血小板減少症 | ノバルティス |
メジャーな製品がズラリと並んでいます。
まるで製薬業界のベンチャーキャピタルかプライベートエクイティファンドのようなビジネスモデルでありながらポートフォリオが分散されているため、非常に安定したビジネスを展開することができています。
こういったビジネスモデルの会社は他にもないことはないようですが、同業の中ではこのロイヤリティ・ファーマが圧倒的に規模が大きいため、ビジネスに関わる情報が最も早く得られる立場です。
2019年の業績はヒュミラやレミケード、テクフィデラなど、大型製品の特許権が満了したために減少しました。
しかし、ブロックバスター化が期待できる新たなポートフォリオも複数持っており、2020年以降の業績は再び成長が期待できるとしています。
2020年ナスダックに上場
これまでは株式上場せずに資金調達し、ここまで成長してきたのですが、減益の業績を発表した2020年6月のタイミングでナスダックに上場しました。
ナスダックは新興企業が上場することが多い株式市場で、売上がなく赤字経営の状態で上場する会社が多いです。
しかし、ロイヤリティ・ファーマは長年高い利益を出している状態で上場しました。
すでに現状で2%前後の配当も出しており、新規上場企業としては珍しいです。
今は減益の前年減益の発表直後ですので少し株価が調整しており、このタイミングで上場することでその後の株価が下がりにくいという思惑があるのかもしれません。
しかも、財務基盤が安定している今の状況で上場して、得た巨額の資金を次の特許権購入に充てることができ、今後のさらなる成長が期待しやすい状況にあるのではないかと思います。
ビジネスの性質上、株価の動きは緩やかになる可能性が高い会社ですが、米国株の長期投資に興味がある方はこのタイミングで購入しておくと安全性が高く、しかも安定した株価上昇と配当を得られるかもしれません。
まとめ
米国はどんどん新しいビジネスが生まれて成長していきます。
それに比べて、日本は規制が強すぎて新しいことをはじめようとすると必ず規制にひっかかったり、現状維持しようとする組織に潰されてしまいますからなかなかイノベーションが起こりませんね。
日本で現状維持が好きなマンモス企業の多くもそろそろ限界が見えてきているところが多く、米国企業の成長速度を目の当たりにすると、そのような日本企業の株式に投資するのも気が引けてしまいます。
日本企業には頑張ってほしいのですが、やっぱりこれだけの規制や高い法人税はグローバルで戦うには相当なハンディになるのは間違いありません。
ロイヤリティ・ファーマのようなスケールの大きなビジネスは日本がやるのはまず無理でしょうから、やはり米国の会社に注目して投資していった方が報われる可能性が高いんじゃないでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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