有望な製薬会社

世界の製薬会社売上ランキングの推移から今後の製薬業界の流れを読む

有望な製薬会社
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こんにちは。

現役MRのリョウタです。

2019年12月期(2020年3月期発表の企業もあり)の年間売上を各社が発表しました。

現在は欧米の巨大製薬会社がトップ10のほとんどを占めていますが、各社のメガファーマ化は正解だったのでしょうか。

また、今後はどうなっていくのでしょうか。

これまでの各社の業績からこれからの流れを考えてみたいと思います。

2020年版の製薬企業世界売上ランキング

全体的には大きな変化はなく、トップ3は変わらずでした。

大きなトピックといえば、2019年にシャイアー買収を完了した武田薬品が日本企業としてはじめて世界売上トップ10に入ったことです。

6.6兆円という巨額での買収だったため、純利益としては赤字でしたが、武田薬品が今後長期的に成長していくためには売り上げ規模や研究開発規模を世界トップクラスにする必要があるという判断があったんだと思います。

買収費用を回収して相乗効果を出していくためにこれからも険しい道のりが待っていると思いますが、世界的にみると日本企業のプレゼンスが下がっている中ですので武田薬品にはぜひ頑張ってほしいですね。

【2019年製薬企業世界売上ランキング】

会社名2019年売上金額(百万ドル)
ロシュ61,869
ファイザー51,750
ノバルティス47,445
メルク46,840
グラクソ・スミスクライン43,102
ジョンソン&ジョンソン42,198
サノフィ40,466
アッヴィ33,266
武田薬品工業30,200
ブリストルマイヤーズ26,145
アストラゼネカ24,384
アムジェン23,362
ギリアド・サイエンシズ22,449
イーライリリー22,320
ベーリンガーインゲルハイム21,279
バイエル20,120
ノボ・ノルディスク18,296
テバ16,887
アラガン16,089
バイオジェン14,378
※単位は百万ドル

アステラス製薬や第一三共が長年トップ20に入れるか入れないかという位置につけていますが、なかなかこの中にレギュラーで入ってくることができずもどかしい状況が続いていますね。

製薬企業は今は規模を追い求める時代ではなくなってきていますが、日本人としてはやはりせっかくこの位置まで来ている両社にはあとひと踏ん張りしてトップ20の中に常に入ってくるようになってほしいです。

そのためにはジリ貧の日本市場よりも拡大する海外の売上比率を伸ばしていかないと厳しいことは目に見えています。

アステラス製薬はすでに7割近くを海外から売り上げていますが、第一三共はまだ4割前後と低い状況が続いていますので、ここを何とかして伸ばすことができれば成長軌道が見えるんだと思います。

あとのトップ20までの企業はほとんどレギュラー化していて毎年あまり大きな変化がないですね。

成長しているベンチャー企業は上位のメガファーマが買収するという流れが続いているためいつもこの顔ぶれが変わらないということもあります。

2019年には武田薬品によってシャイアーが買収されてトップ20から姿を消しましたし、同じ年にブリストルマイヤーズによってセルジーンが買収されました。

また2020年にはアッヴィによってアラガンが買収されることが決まりましたので、また1社トップ20に入る実力があるベンチャーが消えることになります。

今の製薬業界の構図は完全にこの流れになっていますね。

この潮流が未来永劫続くのか、それとも企業買収という流行が終わって製品ごとの提携がメインになっていくのかというところに注目すべきではないでしょうか。

直近5年の製薬企業ランキングの推移

今後を予測していくには、過去はどうだったのかをみていく必要があると思います。

なので直近5年間の製薬企業世界売上ランキングを並べてみました。

会社名2019年会社名2018年会社名2017年会社名2016年会社名2015年
1ロシュ61,869ロシュ57,983ロシュ54,365ファイザー52,824ファイザー44,547
2ファイザー51,750ファイザー53,647ファイザー52,546ロシュ51,588ノバルティス43,415
3ノバルティス47,445ノバルティス51,900ノバルティス49,109ノバルティス48,518ロシュ41,071
4メルク46,840メルク42,294メルク40,122メルク39,807サノフィ34,804
5グラクソ・スミスクライン43,102グラクソ・スミスクライン41,300サノフィ39,612グラクソ・スミスクライン37,929メルク34,782
6ジョンソン&ジョンソン42,198ジョンソン&ジョンソン40,734グラクソ・スミスクライン38,940サノフィ37,541ギリアド・サイエンシズ32,639
7サノフィ40,466サノフィ40,666ジョンソン&ジョンソン36,256ジョンソン&ジョンソン33,464ジョンソン&ジョンソン31,430
8アッヴィ33,266アッヴィ32,753アッヴィ28,216ギリアド・サイエンシズ30,390グラクソ・スミスクライン27,754
9武田薬品工業30,200イーライリリー24,556ギリアド・サイエンシズ26,107アッヴィ25,638アストラゼネカ24,708
10ブリストルマイヤーズ26,145アムジェン23,747イーライリリー22,871アストラゼネカ23,002アッヴィ22,859
11アストラゼネカ24,384ブリストルマイヤーズ22,561アムジェン22,849アムジェン22,991アムジェン21,662
12アムジェン23,362ギリアド・サイエンシズ22,127アストラゼネカ22,465テバ21,903テバ17,884
13ギリアド・サイエンシズ22,449アストラゼネカ22,090テバ22,385イーライリリー21,222イーライリリー16,778
14イーライリリー22,320ベーリンガーインゲルハイム20,648ブリストル・マイヤーズ20,776ブリストルマイヤーズ19,427ブリストルマイヤーズ16,560
15ベーリンガーインゲルハイム21,279バイエル19,760ベーリンガーインゲルハイム20,403バイエル18,226ノボ・ノルディスク16,049
16バイエル20,120武田薬品工業19,085バイエル19,037ベーリンガーインゲルハイム17,594バイエル15,925
17ノボ・ノルディスク18,296テバ18,854ノボ・ノルディスク16,754ノボ・ノルディスク16,767武田薬品工業13,681
18テバ16,887ノボ・ノルディスク16,775アラガン15,941武田薬品工業15,935ベーリンガーインゲルハイム13,227
19アラガン16,089アラガン15,787武田薬品工業15,757アラガン14,571アステラス製薬11,391
20バイオジェン14,378セルジーン15,281シャイアー15,161アステラス製薬12,067アラガン11,080
※売上単位は百万ドル

まず目を引くのはロシュの成長です。

ロシュは2018年にはじめて売上世界一になりましたが、それまではずーっと5位前後の会社でした。

超大型新薬のアバスチンが2007年に発売された後も最高で3位止まりでしたが、ここへきてノバルティスやファイザーを抜いて1位に浮上しています。

「ヘムライブラ」「テセントリク」「ガザイバ」といった新薬が好調に売れており、「アレセンサ」「パージェタ」「アクテムラ」「エディロール」などの主力品が成長しています。

これだけのヒットを連発できる企業は今世界でもロシュとノバルティスくらいですね。

そのノバルティスもロシュに抜かれはしましたが、近年は常に3位以内をキープしています。

「コセンティクス」が好調ですし、心不全治療薬の「エンレスト」話題のCAR-Tの「キムリア」、億越え薬の「ゾルゲンスマ」などが今後どのくらい成長していくのかが興味深いですね。

ファイザーはリピトールやノルバスクなど過去の超大型製品の特許切れがあったわりには世界トップを維持し、最近は「リリカ」「エリキュース」「イブランス」「ゼルヤンツ」などヒットを連発しています。

2019年に米国でリリカの特許が切れて売上が90%以上減少していますが、今後はこれを「ビンダケル」などの新薬や既存の主力製品でカバーできるかどうかにかかっています。

それ以下では、メルクやジョンソン&ジョンソン、グラクソスミスクラインなどの大手は安定感があります。

最近上昇中の企業の代表はアッヴィとブリストルマイヤーズです。

今の主戦場はJAKとPD-1(PD-L1、CTLA-4)ですので、これらで勝ち組の製品を持っている会社は強いです。

ただアッヴィはヒュミラ、ブリストルマイヤーズはオプジーボへの依存度が高いため、特許切れまでにこれらをカバーするという難題が控えています。

その一つがアラガン、セルジーンの買収なのかもしれませんね。

反対に売上と順位を下げている企業としては、ギリアド・サイエンシズ、サノフィ、アストラゼネカ、テバなどがあります。

アストラゼネカは2019年で低迷期を脱出した感がありますが、その他の2社では成長軌道に乗るほどの新薬の見込みが立っておらず、今後も模索が続くのではないでしょうか。

メガファーマ化の答え合わせと今後

これらのトップ企業は多くが2000年代初めに大規模な合併を行っており、当時は一部から不安の声も上がっていました。

大規模な合併の例を挙げると、下記ですね。

【ファイザー】

ファイザー + ワーナーランバート + ファルマシア + ワイス

【ノバルティス】

サンド + チバガイギー + アルコン

【サノフィ】

サノフィ・サンテラボ + アベンティス

【アストラゼネカ】

アストラ + ゼネカ

【グラクソ・スミスクライン】

グラクソ・ウエルカム + スミスクライン・ビーチャム

合併前の会社もまた多くの会社が合併してできていますので、今のメガファーマというのは本当に何社もの会社が集まってできています。

大合併は成功だったのか

その後ある程度の年月が経ってきており、当時の大合併の答えが出てきつつありますが、ほとんどの企業において大規模合併は正解だったと言えるのではないでしょうか。

巨額の資金で合併や買収を行ったこれらの製薬企業の中で、その後衰退していった企業はほぼありませんし、どこも大型新薬を連発して企業としても成長しています。

なので、武田薬品によるシャイアー買収やブリストルマイヤーズによるセルジーン買収なども10年後には「正解だった」と言われている可能性の方が高いんじゃないかと個人的には思っています。

今後も大合併は続くのか?

現在は米国を中心としてバイオベンチャーが数多く出てきており、領域に特化して新しい作用機序の薬剤を開発しています。

これらがモノになってきているため、メガファーマは大企業同士で統合して開発資金を捻出するよりもバイオベンチャーを買収する方が安価に大型製品を手に入れられる可能性が高いです。

この流れになっている間はメガファーマ同士の合併というのはほとんどないんじゃないかと思っています。

しかし、今はベンチャー系が外部からの投資資金を頼りにして赤字垂れ流しで新薬を開発していますが、そうやって開発できる薬剤が一巡したときには今度こそメガファーマ同士が合併してさらに巨額の開発資金を捻出するしかなくなるんじゃないでしょうか。

勝手な想像ですが、それまでもうしばらくバイオベンチャーの活躍とメガファーマのベンチャー買収の流れが続いていくと思っています。

まとめ

製薬業界はビジネスの特性上、時代とともに巨額の開発資金が必要になっていきますので、どうしても製薬企業には規模が求められる業界です。

今のバイオベンチャー時代が終わってまたいつか大合併時代が来るというのが私の予想です。

武田薬品以外の日本の製薬企業は蚊帳の外の話でしたが、アステラス製薬や第一三共などはもうひと頑張りですので是非世界の流れについていってほしいと思っています。

ブロックバスター化が狙える製品を開発している海外のバイオベンチャーの買収合戦に参戦するにはやっぱりある程度の規模が必要なんだと思います。

そのためには国内同士でもなんでもいいので資金力が上がるような合併が必要になってくるんじゃないでしょうか。

他の内資系製薬企業も、海外比率が低い会社はこのまま国内マーケットの縮小とともに衰退していく可能性があるので注意が必要ですね。

大日本住友製薬のように先を見据えて動ける会社が増えていってい欲しいなと思っています。

おちおちしていると中国の会社が台頭してきてあっという間に抜かされていくなんていうこともあり得なくないですから。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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