こんにちは。
現役MRのリョウタです。
新型コロナのワクチン開発も佳境に入ってきました。
もしもワクチンが承認されたら、私たちの生活はかなりのところまで戻ることができる可能性が出てきます。
今はアストラゼネカ、ファイザー/バイオンテック、モデルナのワクチンなどがフェーズ3の最終局面に入っているところですが、これらと同様にアメリカ政府のオペレーション・ワープ・スピードに採用されているワクチンメーカーがあります。
それが「ヴァックスアート(Vaxart)」という米系ベンチャー企業です。
この会社はなんと経口のワクチン技術を持っており、新型コロナのワクチン開発でフェーズ1を開始したところです。
今回はこのベンチャー企業であるヴァックスアートについて共有していきたいと思います。
ヴァックスアートってどんな会社?
ヴァックスアートは2004年にアメリカのサンフランシスコで創設されたバイオベンチャー企業で、さまざまな感染症に対する経口錠剤ワクチンをメインで開発しています。
創業者のSean Tucker氏はワシントン大学で免疫学を専攻し、カリフォルニア大学バークレー校で化学工学の博士号を取得している科学者です。
実質的な創設者なのですが、経営に関してはあまり得意でないのか自身は最高科学責任者というポジションで、CEOには2020年から元マッキンゼーのAndrei Floroiu氏を迎えています。
現在ワクチンの開発は季節性インフルエンザの経口ワクチンをヤンセンファーマと共同開発しており、1価のワクチンがフェーズⅡで進行中です。
また、季節性インフルエンザワクチンはこのほかにも開発中のものがあり、4価ワクチンがフェーズ1、そして前臨床段階ではありますがどのインフルエンザウイルスにも効果を発揮するユニバーサル経口ワクチンもヤンセンファーマと共同開発しています。
ほかにも、ノロウイルスに対する2価ワクチンがフェーズ1、RSウイルスワクチン、HPVの治療ワクチンがすべて経口錠剤でそれぞれ前臨床段階で開発中です。
これらはすべてVAAST™という技術を使って製造されているのですが、これは複製できないように遺伝子を無効化されたアデノウイルス5型を使ってターゲットとなるウイルスのDNAを経口錠剤によって小腸粘膜に運ぶことで粘膜免疫を誘導するという独自技術で、ヴァックスアートがすべての特許をとっています。
ご存知のように、世の中のワクチンというのはほとんどが注射剤であり、経口ワクチンは海外ではロタウイルスやコレラ、腸チフスのワクチン、日本ではポリオワクチンが承認されている程度です。
インフルエンザの経口ワクチンが成功したら世界的にもかなりのインパクトになるのではないでしょうか。
現在は錠剤が服用できない小児や高齢者を主な対象として液体製剤の開発にも取り組んでいます。
新型コロナワクチンも経口錠剤を開発中
もちろん、今回の新型コロナワクチンに対しても経口錠剤のワクチンを開発しており、現在はフェーズ1を実施中です。
少し前の記事「新型コロナのワクチン開発は今どこまで進んでいるのか」でアメリカ政府がオペレーション・ワープ・スピード(OWS)について紹介しましたが、ヴァックスアートの錠剤経口ワクチンもこのOWSに採用されているワクチンの1つです。
その中でもアストラゼネカやジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセンファーマ)がアデノウイルスベクター型のワクチンを開発中ですが、経口錠剤なのはヴァックスアートだけです。
ワクチンの開発スピードでいうと、モデルナ社やファイザー/バイオンテック社が開発しているmRNAワクチンの方が開始スピードが早いため、これらのワクチンはすでにフェーズ3を実施しているのですが、mRNAワクチンはまだどんなウイルスに対しても承認されたものがないため、有効性や安全性に関して未知数のところがあります。
王道はヴァックスアートやアストラゼネカ、ファイザーなどが開発しているウイルスベクターワクチンで、ヴァックスアート以外のワクチンはともにフェーズ3を実施中ですが、ヴァックスアートのワクチンがこのまま順調に進んでいつ頃に臨床試験が完了するのかはまだなんともいえません。
しかし、新型コロナウイルスを克服するためにはあらゆる人にワクチンを投与することができなければいけませんので、小さなこどもや高齢者で注射が困難な人がいたらどうしようもなくなってしまいます。
そんなときに経口ワクチンがあればワクチンの接種率を上げることができますので、ヴァックスアートの経口ワクチンは少し時間がかかってもなんとか承認までこぎつけて欲しいなと個人的には思っています。
ワクチンは経口が主流になるか
注射剤のワクチンの多くは直接静脈に投与することで全身に循環させ、全身性の免疫を獲得することを目的としています。
これに対して経口ワクチンは小腸粘膜から作用することで粘膜性免疫を誘導することが可能になります。
経口ワクチンはただ錠剤で口から服用できるというだけでなく、誘導する免疫の種類も異なるということにおいて特徴的なワクチンです。
粘膜性免疫とは、身体の中で最も大きな面積を持つ小腸粘膜を中心とした免疫機能で、生体内の免疫細胞の60~70%が存在しています。
粘膜性免疫は全身性免疫にも影響を与えているため、粘膜性免疫を誘導することで両方の免疫を活性化させると考えられます。
こういった根拠から、経口ワクチンはただ便利なだけでなく、今後はワクチン開発の中心になっていくことも考えらえるのではないでしょうか。
どんなウイルスに対しても単純に接種率も高くなると思いますし、注射よりもメリットは多いです。
ただ、今のところは臨床的に承認を取得することができるほどの効果が得られるかどうかというのが不確定ですし、多くの大企業が注射剤のワクチン開発をメインにしているので、すぐにそういった流れになることは考えにくいです。
ヴァックスアートの新型コロナワクチンが承認されれば、一気に知名度が上がって開発が進むかもしれませんので、期待しています。
まとめ
日本でも、森下仁丹と神戸大学が共同で新型コロナの経口ワクチンを開発することを発表していますね。
日本は新型コロナの感染者が少ないので、海外に比べても医薬品やワクチンの開発は難易度が高いでしょうけど、日本人として日本の技術力の高さを証明してほしいという気持ちはあります。
しかしアメリカはやっぱりスピードも資本力も桁違いですから、頼らざるを得ないことも多いですね。
ヴァックスアートのような将来性を期待してしまうベンチャー企業もたくさんあります。
まだ製品もなく赤字のベンチャー企業ですのでハイリスクですが、新型コロナワクチンのメーカーに投資を検討している方はこちらもどうぞ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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