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アストラゼネカの新型コロナワクチン中断で承認は絶望なのか

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こんにちは。

現役MRのリョウタです。

先日、アストラゼネカの新型コロナワクチンで副作用が発現し、臨床試験が中断されたというニュースがありました。

アストラゼネカのワクチンは日本政府がすでに1億2千万回分のワクチン供給に向けて合意しているだけに、このニュースは我々日本人にとっても心配になる話でした。

一般的にワクチンの開発は治療薬よりも難しいと言われていますが、アストラゼネカの新型コロナワクチンはこのまま頓挫してしまうのでしょうか。

今回は新型コロナワクチンについて現状を共有したいと思います。

アストラゼネカの新型コロナワクチン開発状況

2020年9月現在、179の新型コロナワクチンの開発が進んでいます。

そのうち第三相臨床試験に進んでいるワクチンは9種類ですが、その中でも臨床試験の進行具合でトップ集団にいるのがアストラゼネカとオックスフォード大学が開発しているAZD1222です。

アストラゼネカのAZD1222の第三相臨床試験はアメリカ、イギリス、ブラジル、南アフリカで実施しており、日本ではつい先日第一相と第二相臨床試験が開始されたばかりでした。

7月に発表された第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験では評価された症例全例でT細胞反応が誘発され、単価位投与を受けた症例の95%は1か月後に抗体が4倍に増加したという結果の報告がTHE LANCETに掲載されました。

この結果をもって各国で第三相臨床試験に進んだのですが、イギリスでは12,000人、ブラジルでは2,000人、アメリカでは30,000人と大規模な症例数で試験を行っています。

そんな中、イギリスの治験参加者1人に横断性脊髄炎が発現したため、ADZ1222の世界中の臨床試験を中断しました。

横断性脊髄炎はその名のとおり脊髄に炎症が起こる疾患で、原因としてはウイルス感染症後の自己免疫反応ということもありますが、多発性硬化症であるが最も多いとされています。

あまり大きく報道されていませんでしたが、AZDでは7月にも横断性脊髄炎が1名出て試験が中断しており、その時には未診断だった多発性硬化症が確認され、第三者の試験監視委員会においてこの有害事象はAZD1222とは関連がないと結論付けられています。

そのため、今回のケースでも最も可能性として高いのは多発性硬化症が原因の横断性脊髄炎ということであり、被験者に多発性硬化症があるのかどうかを確認している状況だと思われます。

多発性硬化症が原因になっていることが分かれば、第三者機関の試験監視委員会でも再び「関連なし」と判断され、すぐに試験が再開されることは間違いないです。

そもそもこの試験中断が発表される前日に、新型コロナワクチンを開発している製薬企業9社が「科学的なプロセスを遵守し、拙速な承認申請はしない」という共同声明を発表しました。

これはトランプ大統領が大統領選挙を前にして、ワクチンの早期供給を約束するかのような発現を連発していたことから、ワクチンの安全性を軽視していることを憂慮した製薬企業の異例の決断だったと言えます。

欧米の製薬企業は巨額の利益を得られる機会を目の前にして、それでもコンプライアンスを最優先するという姿勢が共同声明と自主的な治験中断によって確認されたことは、ゆくゆくはこれらのワクチンを接種することになる可能性が高いわれわれにとっても非常に良いことだと思います。

治験は困難だが有望なワクチンは数多く進行中

アストラゼネカとオックスフォード大学のAZD1222はアデノウイルスベクターワクチンと呼ばれるタイプのワクチンです。

これは、従来のワクチンのように弱毒化・不活化したウイルスを直接接種するのではなく、ウイルスの遺伝子の一部(スパイクタンパク質)を組み込んだ組換えのアデノウイルスを投与することでより効率的に免疫を誘導でき、安全性も高いと言われています。

しかし、ウイルスベクターワクチンはまだ実用例が非常に少なく、ジョンソン&ジョンソンと中国のカンシノ・バイオロジックス社のエボラウイルスワクチンの2製剤しかありません。

SARSやMERSは新型コロナウイルスと酷似していますが、これらのウイルスのワクチンも完成しなかったことを考えても今回のワクチン開発がいかに難しいかが想像できますが、なんとか承認されるようがんばってほしいですね。

アデノウイルスベクターワクチンの他にも、モデルナ社やファイザー/バイオンテック社が開発しているmRNAワクチンが第三相臨床試験を実施中です。

mRNAワクチンは、ウイルスの本体ではなくスパイクたんぱく質の塩基配列の一部あるいは全部をコードしたmRNAを脂質ナノ粒子(LNP)に封入して投与するワクチンです。

mRNAが生体内で翻訳されて免疫が誘導されるため、通常のワクチンに比べても間違いなく安全性が高いワクチンです。

近年多くのベンチャー企業が開発している技術ですが、まだこの技術を使って承認されたワクチンは1つもありませんので、新型コロナワクチンで承認されれば世界初となります。

他にも、ノババックス社やサノフィなどが開発中の組換えたんぱく質ワクチン、イノビオ社や日本のアンジェスなどが開発中のDNAプラスミドワクチン、田辺三菱製薬と提携しているカナダのMedicago社が開発中の組換えウイルス様粒子(VLP)ワクチン、中国の会社などが開発している不活化ワクチンなど、いろいろな技術を使って新型コロナワクチンが開発されています。

これだけ様々な技術を使って数多くの企業が開発に乗り出しているワクチンはこれまでもなかったのではないでしょうか。

アストラゼネカのワクチンもまだ中止と決まったわけでは全くありませんし、180近くの開発案件がありますので、ワクチンの承認には以前として期待がもてそうです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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