MRのリストラ

武田薬品のリストラ発表は何を示唆しているのか

MRのリストラ

こんにちは。

現役MRのリョウタです。

7月に武田薬品がフューチャー・キャリア・プログラム(希望退職)の導入を健闘していると報道されました。

それからわずか1ヶ月での実施発表です。

2018年に武田薬品がシャイアーを買収することを発表したあと、その買収金額の巨大さあまりに私は武田薬品も数年後に大きなリストラをするだろうと予想しましたが、およそ2年でそれは現実になりました。

会社としては当然のことながら、表向きには「社員の生涯設計に基づくキャリアをサポートする」とか、「多様なキャリアニーズに応える」ということを導入の理由としていますが、実際にはもっとドライなビジネス的要因があるはずです。

ではいったい、今回の希望退職の導入は武田薬品にとってどういう意味を持っているのでしょうか。

それについて個人で勝手に推測してみたいと思います。

フューチャー・キャリア・プログラムの概要

今回の武田薬品の希望退職プログラムでは、事務職とMRが主な対象になっており、研究開発部門などは対象外です。

対象者のメインはMRということで間違いないと思います。

募集期間は2020年9月28日~2020年10月16日に設定されており、退職日は11月末です。

10月中にはプログラム適用者が発表されるかと思いますので11月からは武田薬品のMRが大勢転職市場に参加することになるでしょう。

武田薬品以外のMRの方で転職を希望している方は今のうちにやっておいた方がいいかもしれませんね(笑)。

それくらい、国内において武田薬品ブランドは強力です。

対象人数は非公開のため現時点ではわかりませんが、勤続3年以上かつ対象年齢が30歳以上と今までの内資系企業にはないくらい若い社員まで対象に含まれています。

しかしこれほど若い年齢まで対象を広げているということは、かなりの人数を削減するつもりかもしれませんね。

ただ、退職金の割増額は他社の物と比べてそれほど多くないというウワサですので、30代のような若いMRがこのプログラムに応募するのはメリットが薄いかもしれません。

そういうことを加味すると、結局はベテランMRの粛清ということなんでしょうか。

武田薬品には過去にも巧妙な手法で実質指名解雇まがいのリストラを行った経緯があり、会社にとって必要と思っている若くて優秀な社員をフリーで希望退職させるつもりはないはずです。

武田薬品のMR数は2020年の今でも2,000名を超えていますが、今の日本で2,000名以上MRがいるのは武田薬品、第一三共、ファイザーの3社しかありません。

日本の医薬品市場は一見すると、キイトルーダなど一部の超高薬価製品の影響で下がっていないように見えていますが、最近の平均成長率はそれらを含めてようやく1%程度と先進10ヵ国で最低です。

ということは、それら超高額医薬品を省くと実質的にはマイナス成長を始めていますし、武田薬品がすでにプライマリーよりもオンコロジーやスペシャリティ製品に注力していることや、新型コロナによるIT活用が広がることなどを考慮すると、このタイミングでMRを大幅に減らすことは企業経営にとって間違いなく必要なことでしょうね。

ただ、武田薬品がこれほど大々的に希望退職をやる理由はもちろんこれだけではないでしょうね。

日本最大手企業からグローバル企業へ

ご存知のとおり、武田薬品が今回、日本国内のMRをリストラする最も大きな影響は「シャイアー買収」だと言われています。

2018年にシャイアーを買収したことによって武田薬品は2019年の売上高で世界9位に入り、日本企業初となる世界トップ10に入ることができました。

しかし、武田薬品の会社規模でシャイアーの買収は少々大きな買い物であったため、買収金額は6.8兆円、2020年3月期の連結決算で有利子負債は5兆円程度あると発表されています。

現在、武田薬品はこの負債の利子だけで毎年数千億円を返済しなければならなくなっており、できる限り早く負債を縮小するべくいろいろな手を打ってきています。

主な返済手段はこちらです。

【シャイアー買収後の武田薬品の資産売却歴

・旧東京本社ビルの売却

・大阪本社ビルの売却

・ドライアイ治療薬シードラをノバルティスに売却

・中近東・アフリカの事業をスイスのアシノ社(Acino International AG)に一部売却

・ロシアの事業をロシアのシュターダ社(Stada Arzneimittel AG)に一部売却

・南米の事業をブラジルのハイペラファーマ社に一部売却

・欧州の事業をデンマークのオリファーム社に一部売却

・アジアの事業を韓国のセルトリオン社に一部売却

・一般用医薬品子会社の武田コンシューマー・ヘルスケアを米投資ファンドのブラック・ストーンに売却

・手術用パッチ剤のTachoSilを米国のコルザ・ヘルスに売却

ざっと上げただけでこれだけの資産売却をしています。

これによって、シャイアー買収によって6兆円以上あった負債が5兆円まで減っていますが、これでもまだまだ重い利子がのしかかってきますので、さらなる負債の圧縮が必要になります。

それが今回のフューチャー・キャリア・プログラムにつながったのは間違いないと思います。

しかし、シャイアーの買収がなかったとしても、グローバル企業になるためには成長しない日本市場において今の社員数は多過ぎるため、これを削減する必要があったはずです。

武田薬品はグローバルで約5万人の社員がいますが、そのうち日本の社員は5,350人、その中でMRは2,100人と多過ぎます。

しかも、シャイアー買収後に海外の人員削減は行っていたものの、国内はほぼノータッチでしたから、やらないわけにはいきません。

日本のマーケットの規模と今後の将来性を考慮すると、ここでも希望退職の必要性は高まっていたはずです。

今後、武田薬品がグローバル競争においてファイザーやメルクなどのメガファーマと肩を並べる会社になるために、日本企業だからこそやりにくかった国内事業規模を可能な限り効率化させ、伸びていく市場のリソースを最大化させるという意思表示を明確にしているということなのではないでしょうか。

それは北米であり、欧州であり、中国をはじめとする新興国だということです。

シードラの欧州申請取り下げ

シャイアー買収による有利子負債の返済は今のところ順調に進んでいると言えますが、1つ想定外のことが起こりました。

それはシャイアーの有望な新薬だったドライアイ治療薬のシードラを、ノバルティスが欧州で申請取り下げたことです。

シードラはシャイアーが持つ有望な新薬候補でしたが、武田薬品がシャイアーを買収した後、ノバルティスに53億ドルで売却しました。

売却時の契約により、ノバルティスから販売目標達成時に最大で19億ドルの報奨金を受領する予定になっていたため、武田薬品は2021年にその報奨金受領の予定を見積もっていました。

しかし、ノバルティスがなぜか欧州での承認申請を取り下げたため、この販売目標達成率の見込みが低下する公算が大きくなり、受領予定の報奨金から約2億ドルの損失を見積もっています。

この穴を埋めるため、このタイミングで希望退職を行うというのもあるのかもしれません。

通常、希望退職を行うには割増退職金などの費用がかかりますが、シードラが欧州で売れることによって継続的にもたらされる報奨金の見込みが減ってしまったとしたら、少しでも早く人員削減をすることでカバーしようとしているということはないでしょうか。

せっかく順調に負債の返済がすすんでおり、2021年3月期の連結決算では前年比3.5倍の3550億円を見込んでいる中、シードラによって計算が狂ってしまいましたから、そういった流れから今回の希望退職がきているのかもしれませんね。

最終目的は本社移転?

武田薬品は内資系企業の中で最もグローバル企業として認められている感じがしますし、世界のリーディングカンパニーになるという強い意志を感じます。

そのための行動としてシャイアーの買収があり、今回の日本の人員削減があるということは間違いがありません。

もしかしたら、武田薬品は将来的に他のメガファーマが試みたような他国への本社移転まで考えているのかもしれません。

グローバルで戦うには、日本の規制や法人税制は非常に大きなハンディになります。

メガファーマの仲間入りを果たすことが武田薬品創業家の悲願なのであれば、それを達成するためには本社を海外に移転することも厭わないのかもしれません。

日本に強いこだわりがあるのなら、CEOに外国人を起用したり、役員の8割以上を外国人にしないのではないでしょうか。

日本の法人税率は2020年現在で23.2%ですが、アメリカは21%、イギリスなら19%、シャイアー本社があったアイルランドならなんと12.5%です。

10%以上税負担が軽くなるとなれば、売上が高くなればなるほど魅力的ですし、そのための布石のようにも見えてきます。

クリストフ・ウェバー社長の招聘、シャイアー買収、日本の人員削減はもしかするとすべてその流れの一環なのかもしれませんね。

いずれにしても、武田薬品のリストラは業界全体に衝撃を与えますね。

武田薬品が行動を起こすと、内資系の製薬企業は追随することが非常に多いですから、これから内資系のリストラが起こる可能性がさらに高まったような気がします。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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