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武田コンシューマーヘルスケアは3000億円の価値があるのか

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こんにちは。

現役MRのリョウタです。

長らくウワサされていた武田薬品のOTC薬子会社の武田コンシューマーヘルスケアの売却が決着しそうです。

売却先はアメリカの投資ファンドであるブラックストーンになるとの報道が相次いでいます。

親会社の武田薬品はシャイアーの買収で5兆円の有利子負債があり、コア事業以外を売却することで財務状況を改善させるというクリストフ・ウェバー社長の手法は、日本人にはなかなかできないと思いますので納得できる部分はあります。

今回武田コンシューマーヘルスケアは3,000億円で売却が決まりそうだという報道が多いですが、武田コンシューマーヘルスケアはほんとうに3,000億円以上の価値があるのでしょうか。

例によって私の勝手な推測で記事にしてみたいと思います。

3,000億円は割高

結論からいうと、武田コンシューマーヘルスケアの3,000億円はかなり割高なのではないかと思います。

まずは数字で見てみましょう。

企業のM&Aの際に収益性や価値基準としてよく使われるのがEBITDA(償却前営業利益)です。

EBITDAは簡単に言うと、言葉のとおり減価償却費を除く前の営業利益のことです。

減価償却費というのはあくまでも会計帳簿上で利益から引かれている数字ですので、これを除く前の数字を出すことで、より現金的な利益を算出することができるというわけです。

株式投資をしている方にはなじみの深いPER(株価収益率)という指標がありますが、これは企業の株式時価総額が純利益の何倍かというのをみるためのものです。

株式時価総額を企業価値、純利益をEBITDAに置き換えてEV/EBITDA倍率という指標として、買収金額がどのくらい適正な金額かを示す指標として国際的に使われています。

このEV/EBITDA倍率ですが、東証一部上場企業の平均倍率はおよそ8.3倍であり、先進国企業の買収の際にも8倍程度の金額が妥当と言われています。

逆に、10倍を超える金額で買収するとなると割高だと言われており、新興国企業の買収にも10倍を大きく超える金額での買収は明らかに高いと言われるそうです。

では、今回の武田コンシューマーヘルスケアの倍率はどうだったかというと、3,000億円で買収が決まればEBITDAの倍率はおよそ16~17倍になるようです。

ちなみに、同業他社のEV/EBITDA倍率をみてみると、最大手の大正製薬が12.5倍、第2位のロート製薬が11倍という水準です。

それらを考えても、武田コンシューマーヘルスケアの3,000億円以上というのは、ブラックストーンからみてかなり高い買い物だと言えるのではないでしょうか。

もちろん、ブラックストーンはアメリカの老舗ファンドですのでそれは重々承知での入札だと思います。

武田ブランドは国内外で非常に高い評価がありますし、ここ数年の業績は落としていますがまだまだ利益を成長させることができると見込んでの買収だと思います。

しかし、ブラックストーンはファンド会社ですので、武田薬品から離れた武田コンシューマーヘルスケアを利益成長させ、3,000億円よりも高い価値に向上させることができるのかは見ものです。

武田薬品は当初4,000億円での買収を目指していたようですが、大正製薬が思ったよりも高い金額を出してこなかったのが計算外だったのでしょう。

それでも、3,000億円以上で買収することができて今ごろホッとしているのではないかと思います。

武田コンシューマーヘルスケア売却は最終手段?

武田薬品のOTC薬は、タケダの黎明期を支えたロングセラー商品が複数あり、タケダ関係者だけでなく、日本人にとって非常に思い入れがある事業です。

そのことはもちろん、クリストフ・ウェバー社長も認識していると思います。

だから、社長は2019年1月のシャイアー買収完了後、武田コンシューマーヘルスケアについて言及しており、その時には「売却はしない。国内OTC薬で第2位のパフォーマンスに満足している」と断言しています。

これでタケダ関係者はみな一安心したと思います。

しかし、武田薬品はグローバルでトップクラスになるために、消化器系、がん、中枢神経系、希少疾患、血漿分画製剤の5つを重点領域と定めており、それ以外の領域の薬剤やOTCを非重点領域として売却を進めてきました。

シャイアー買収で6兆円もの有利子負債を抱えて4,000億円と見積もった非重点領域のビジネスを売却しないということはどう考えてもあり得ないということは市場関係者のあいだでささやかれていました。

結果的には、「売却しない」と断言してからわずか1年半で売却することになりました。

では、クリストフ・ウェバー社長は最初から武田コンシューマーヘルスケアを売却するつもりだったにもかかわらず「売却しない」とウソを言っていたのでしょうか。

私はおそらくそうではないと思います。

2018年9月にはP&Gやアストラゼネカなどで要職を務めた野上麻理氏を社長に就任させていますし、売上が800億円規模の同社を1,000億円のグローバルOTC薬企業に成長させるということをコメントしています。

また、有利子負債を1.1兆円圧縮させることを掲げていましたが、これまでにかなりの資産をすでに売却してきています。

具体的には、日本の旧東京本社ビル、大阪本社ビル、ドライアイ治療薬のシードラ、中近東・アフリカ、ロシア、南米、欧州、アジア等の事業の一部を立て続けに売却しています。

それでも1.1兆円に届かなかったため、社長は最終手段として武田コンシューマーヘルスケアを売却することをどこかのタイミングで決断したのではないかと思います。

たしかに、医療用医薬品に比べるとOTCは利益率などの点で劣ります。

しかし、武田薬品はOTC薬もグローバルに展開されており、充分成長していけると判断していたはずです。

武田コンシューマーヘルスケアの2019年3月期の売上高は641億円、純利益は96億円で、直近の2年は業績を落としているものの、比較的堅調です。

できることなら残したいという社長の想いが、武田コンシューマーヘルスケアの売却を後回しにさせたのではないかと私は思っています。

日本にとって武田薬品のブランドイメージそのものである武田コンシューマーヘルスケアはプライスレスな存在です。

日本人の多くは武田コンシューマーヘルスケアをずっとタケダのままでいてほしいと思っていますし、社長もそれは分かっていたはずです。

じゃあ、ファンドの傘下になったあとはどうなってしまうんでしょうか。

東芝メモリやすかいらーく、パイオニアなどはファンドが買収していますし、参天製薬のリウマチ薬事業を継承したあゆみ製薬も今回武田コンシューマーヘルスケアを買収したブラックストーンが買収していますので、案外買収後もそのまま運営されていくのかもしれません。

いつの日か、シャイアーを買収してつくった有利子負債を返済し終えた武田薬品が再び武田コンシューマーヘルスケアを買い戻す日が来るのを待ちたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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