こんにちは。
現役MRのリョウタです。
製薬企業の4-6月期の業績がほとんど出そろいました。
4-6月期の会社業績というのは、ご存知のとおり新型コロナで緊急事態宣言があり、ビジネスが一番滞った時期の業績になります。
当然ながらほとんどの業界で非常に厳しい決算が出ています。
特に厳しい業界としては、外食業界が前年同期比で30%~50%、ホテル業界、旅行業界、航空業界は前年同期比70~95%程度のマイナスとなっており、非常に深刻な状況が続いています。
このような中、製薬業界の4-6月期の業績は好調な企業がたくさんありました。
もともと製薬業界はディフェンシブで景気後退局面に強いと言われていますが、今回の決算で強かったのはどうしてでしょうか。
MRにとって良くない理由で増益?
4-6月期の四半期決算の発表が続いていますが、業界によっては悲惨な状況になっています。
たとえば、国内を代表する航空会社のJAL(日本航空)の2020年度第1四半期決算は、売上高が前年同期比マイナス78.1%減の763億円、純損失は前年同期から1,066億円減の937億円でした。
客数の減少でいうとさらに激しく、国際旅客数が前年比98.6%減、国内旅客数が前年比86.7%減でした。
このような感じで、新型コロナの経済への影響は非常に厳しい状況が続いています。
しかし製薬業界はというと、多くの企業が四半期決算で増益を発表しています。
主な製薬会社の売上高と営業利益を見てみると、航空会社やホテル会社などの業績と違ってあまり新型コロナの影響を受けていないことが分かります。
【製薬会社の2020年4-6月期決算】
企業名 | 売上高前年同期比(%) | 営業利益前年同期比(%) |
武田薬品工業 | ▲5.6 | 270.4 |
アステラス製薬 | ▲8.1 | ▲21.1 |
第一三共 | ▲4.9 | ▲40.1 |
エーザイ | 7.5 | 24.4 |
大日本住友製薬 | 13.9 | 42.4 |
塩野義製薬 | ▲11.6 | 19.1 |
小野薬品工業 | 1.3 | 35.3 |
大正製薬HD | 24.5 | 12.8 |
参天製薬 | ▲2.7 | ▲13.3 |
キョーリン製薬HD | ▲4.1 | 27.8 |
日本新薬 | 1.8 | 16.6 |
ツムラ | 3.5 | 9.6 |
持田製薬 | 3.4 | 1.7 |
ゼリア新薬工業 | ▲11.8 | ▲18.6 |
キッセイ薬品 | ▲0.2 | ▲20.8 |
科研製薬 | ▲19.1 | ▲25 |
あすか製薬 | 2 | ▲31.2 |
日本ケミファ | ▲13.3 | – |
わかもと製薬 | ▲22.2 | – |
新型コロナによって外来数が減ったことや、4月の薬価改定が少し売上に影響した会社もあったようですが、上記の業界と比べると業績への影響は非常に軽微です。
売上高、営業利益ともに増加した会社もいくつかあります。
ではなぜ製薬業界は新型コロナで一番しんどかった時期にこれほど業績が悪化していなかったのでしょうか。
それは、「営業活動が激減したことによって経費がほとんどかからなかったから」です。
私も3月から6月まで在宅勤務していましたので、その間営業にはほとんど出ていませんでした。
その時から、「会社のMRのほとんどがいきなり外勤しなくなったということは、日当と営業車のガソリン、高速代、説明会や講演会の経費がほとんどゼロになるんじゃない?それってめちゃくちゃ経費浮いてるよね?」
と思っていたのですが、やっぱりちゃんと決算に反映されています。
小野薬品は24億円、キョーリン製薬は6.7億円の販売管理費が浮いて営業利益が増益になったと発表しています。
その他の企業もほとんどの会社のMRが在宅勤務していたでしょうから、どこの製薬会社も3か月で数億・数十億円単位で日当や営業車経費が浮いていたんですね。
会社にとっては思わぬ経費削減によって新型コロナで受けた影響ぶんくらいは余裕で相殺できてしまったわけですが、これってMRにとってはあまり宜しくない話なんじゃないかと思います。
MRがシェアオブボイスしなくなってもほとんど売上げに影響がなかったばかりか、年間100億円前後の経費が浮いてしまう可能性があるということが実証されてしまいましたから。
ということは、MRが1,000人いたら半分の500人にしてみたらどうなるか。
経費が年間50億円浮いて、MR500人分の経費も浮いて・・・。
私が製薬会社の経営者ならそう考えます。
「日本の製薬会社の社長たちはMRについてどう思っているのか」で製薬会社のトップがMRを減らしていくことについてコメントしていることを記事にしましたが、上記のようなことで確信を得たのかもしれませんね。
なかなかこんな壮大な実験をすることは普段ならできませんが、新型コロナの影響で製薬業界全体でものすごいインパクトのある実験ができてしまいました、というので今回のMR在宅勤務をポジティブに捉えている経営者が多いんじゃないかと私は危惧しています。
まとめ
MRを含めて、製薬会社に勤めていて今回の新型コロナの影響を受けて職を失ったり、給料が大きく減ったりした人はほとんどいないと思います。
だから「MRになって本当に良かった」と胸を撫でおろしている人はけっこう多いんじゃないでしょうか。
しかし、MRは他の業界と比べても破格の経費を使って仕事をしていることが仇となってしまった可能性があります。
毎日手当を3,000円ももらって営業車で高速道路乗り放題、説明会や講演会で何十万、何百万円をバンバン使っている業界なんて、今のご時世そうそうないんじゃないでしょうか。
それを削減しても売上にはたいして影響しないし、多額の経費が浮いて経営がやりやすくなるとなれば、そっちの方がいいに決まっています。
2020年4-6月期の製薬各社の決算結果によって、長期的にはMRが減少していく可能性が一層高まったんじゃないかと感じました。
みなさんはどう思われますか?
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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