こんにちは。
現役MRのリョウタです。
製薬会社が持続的に成長するためにはなんといっても新薬の開発力が大切です。
導入品があってもよいですが基本的に単発的ですし、利益率も自社開発に比べると低くなります。
継続して成長していく製薬メーカーは必ず自社開発の優れた新薬を上市しています。
医薬品市場が縮小していくことが予想される日本ではMR数も減少していく可能性が高いですが、自社開発品が発売される会社とそうでない会社ではMRの需要も大きく変わってくると思います。
今回は現状の各社のパイプラインを確認して、そこからMRが必要かどうかを予想して見たいと思います。
製薬各社の開発後期パイプライン
新薬開発のハードルは年々上がっており、今では新薬開発の成功確率はなんと2万5千分の1と言われています。
開発がスタートしてから上市することができるまでにはおよそ9~17年間の年月と200億円~300億円、薬によっては1000億円以上かかるものもあるのですから、規模が小さな企業ほど自社開発は厳しくなっているといえますね。
ベンチャー企業でまだ販売している製品がなく、有望な新薬を開発することに全力を注げるなら投資家も資金を提供してくれるので問題ないですが、すでに長年の実績がある中小の製薬会社だといくら有望な新薬候補を見つけたとしても、一縷の望みをかけて赤字を垂れ流すことへのハードルは相当高いので、余計に大手やベンチャーとの開発力の差は開いていくんでしょうね。
それを裏付けているのが今の各社の開発パイプラインです。
国内のフェーズ3以上のパイプライン数を一覧にしてみました。
まずは主な内資系企業です。
会社名 | 新規化合物数 | 適応追加数 | |
1 | 武田薬品工業 | 18 | 11 |
2 | 大塚製薬HD | 8 | 6 |
3 | アステラス製薬 | 5 | 7 |
4 | 第一三共 | 3 | 8 |
5 | エーザイ | 3 | 10 |
6 | 小野薬品 | 4 | 28 |
7 | 大日本住友製薬 | 5 | 2 |
8 | 塩野義製薬 | 2 | 4 |
9 | 田辺三菱製薬 | 7 | 1 |
10 | 協和キリン | 1 | 6 |
11 | 大正製薬 | 1 | 0 |
12 | 参天製薬 | 2 | 0 |
13 | Meiji Seikaファルマ | 4 | 0 |
14 | 帝人ファーマ | 5 | 0 |
15 | 久光製薬 | 1 | 2 |
16 | 旭化成ファーマ | 1 | 0 |
17 | 日本新薬 | 3 | 2 |
18 | 鳥居薬品 | 1 | 2 |
19 | キョーリン製薬HD | 1 | 2 |
20 | 持田製薬 | 3 | 3 |
21 | 科研製薬 | 2 | 0 |
22 | キッセイ薬品 | 4 | 0 |
23 | あすか製薬 | 1 | 3 |
24 | マルホ | 6 | 0 |
25 | JCRファーマ | 1 | 1 |
内資系製薬メーカーではトップ10前後の大手企業とそれ以下の中堅企業で後期パイプライン数が大きく違っていることが一目瞭然です。
大手はさすがというか、新規化合物も適応追加も潤沢にありますね。
新規化合物と適応追加を合わせた後期パイプラインは、内資系大手10社のうち実に7社が10以上あります。
それに対して11位~25位の内資系中堅は10以上の後期パイプラインを持っている会社は1社もなく、5つ以上持っている会社が5社でした。
フェーズ3以上の後期パイプラインを1つも持っていない企業はさすがにありませんでした。
数が多ければ良いというわけではありませんが、開発段階で中止になってしまう薬が一定数あることを考えると、コンスタントに新薬を発売するためにはある程度の数が必要なのは間違いありませんよね。
企業の利益成長を考えても主力製品のパテントが切れる前に新薬を出していくことが大切になりますので、企業規模の大きさというのは戦う上で大切だということがこのパイプライン数でもわかるような気がします。
では次に外資系企業の国内フェーズ3以上のパイプライン数を一覧にしてみます。
会社名 | 新規化合物数 | 適応追加数 | |
1 | アストラゼネカ | 14 | 24 |
2 | 中外製薬 | 10 | 18 |
3 | ノバルティス | 11 | 15 |
4 | アッヴィ | 3 | 16 |
5 | ファイザー | 10 | 8 |
6 | 日本イーライリリー | 10 | 8 |
7 | ブリストルマイヤーズ(セルジーン含む) | 5 | 13 |
8 | MSD | 5 | 11 |
9 | バイエル薬品 | 6 | 9 |
10 | サノフィ | 11 | 2 |
11 | ヤンセンファーマ | 2 | 9 |
12 | UCBジャパン | 6 | 2 |
13 | ノボノルディスク | 5 | 3 |
14 | ギリアドサイエンシズ | 4 | 3 |
15 | GSK | 3 | 3 |
16 | ベーリンガーインゲルハイム | 0 | 4 |
17 | メルクバイオ | 1 | 2 |
さすが外資系は内資系と比べてパイプライン数は全体的に多いことがわかります。
11位までの会社が10以上の後期パイプラインを持っています。
なかでもトップのアストラゼネカの38というのは驚異的ですね。
フェーズ3以上のパイプライン数ですから、フェーズ2以下を合わせるとさらに多くのパイプラインがあるのですから脱帽です。
数だけでなく、発売された製品の多くがその領域で中心となるような製品ですから、内資系にとって外資系の壁はまだまだ厚いです。
開発品目が多い会社の方がリストラしている
内資系も外資系もやはり大手が圧倒的に次の新薬がたくさん出てくる状況になっていますが、ここ数年をみてみるとその大手メーカーの方がMRをリストラしている印象があります。
内資系でいえば、武田薬品は先日MRリストラを発表したばかりですし、アステラス製薬、エーザイ、中外製薬、大日本住友製薬、田辺三菱製薬、協和キリンと大手が軒並みMRを減らしています。
外資系ではもはや改めて並べるまでもないくらいほとんどの会社がMRを減らしてきています。
それに対して中堅では近年まとまった数のMRを削減したのは鳥居薬品くらいではないかと思います。
さらに、武田薬品、アステラス製薬、ノバルティス、アストラゼネカは支店や営業所もほぼ全て廃止して内勤業務を在宅中心に切り替えています。
売上も利益も高くて開発品もたくさんある大手の方が営業所を廃止したりMRをリストラしたりしている。
売上や利益がジリ貧で開発品も乏しい中堅の方が支店や営業所がたくさんあって、MRもほとんど減らしていない。
今のところこのような流れになっていることが、私は不思議で仕方がないです。
一概には言えないかもしれませんが、今特にピカピカの新薬を扱っているわけでもなく、かといって開発品がたくさん控えているわけでもない中堅企業はどうやってプライマリー薬でシェアオブボイス競争をしてきた頃と同じ数のMR数を維持していくつもりなのでしょうか。
少しガマンすればヒュミラやオプジーボのようなものすごい新薬が控えているのならいいですが、そんな中堅企業はほとんどなかったと思いますしどうなんでしょうかね・・・。
外資系のように自社の指標に基づいてドラスティックに社員をリストラできる経営者が内資系にはあまりいないということが原因なんだと思いますけど。
どうにもならなくなってから酷いリストラをするというのが、他の業種の内資系企業を見ていると既定路線なのかなと思います。
会社が拡大をしている間はほぼリストラの話はないが業績が崩れて切羽詰まってから大規模なリストラをしてきたNECや富士通などの電機業界が代表的な例ですが、製薬業界も続いて代表例になりそうな気がします。
製薬業界はある意味政府にマーケットを握られていますので、政府による薬価の更なる引き下げと、業績が上向かなくなり開発品が枯渇してMRの維持に限界を迎えるポイントが何年後になるのかまではわかりませんが、国内では先例があるだけに同じようになる可能性は極めて高いでしょうね。
まとめ
大手は業績が良くてもドラスティックにMRをリストラするようになってきていますし、中堅業績がどうにもならなくなってからMRを投げ捨てるでしょうから、結局のところMRをやっていたらリストラの場面に遭遇するのを避けるのは難しいのかもしれませんね。
外部要因で避けられないのであればビビっていても仕方がないですし、かといってMRをこれまで以上に一生懸命やっても将来性がない可能性が高いので、使える時間を目いっぱい使って別のスキルを磨くしか方法がないという結論に何度考えてもなってしまいます。
自分は絶対にリストラ対象にならないという自信がある方はいいかもしれませんが、そうでない方は何か始めてみましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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