こんにちは。
現役MRのリョウタです。
お馴染みの楽天の製薬会社「楽天メディカル」が開発している抗がん剤が来月にも承認される可能性があるようですね。
もしも承認されたら、世界初の治療法として頭頚部がんに臨床使用が可能になります。
楽天が新しいがんの治療法を開発しているというのはMRの方だと耳にしたことがあると思いますが、一般の方はほとんど知らないのではないでしょうか。
楽天メディカルと光免疫療法について記事にしてみたいと思います。
世界初の光免疫療法を承認へ
楽天メディカルは2017年に再発頭頚部がん患者を対象として国内で治験を開始した「RM-1929」について、今年3月に厚生労働省に承認申請を行いました。
5月には条件付き早期承認制度の適用対象になり、9月に薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会が開催され、了承されれば同月にも承認される見込みです。
条件付き早期承認制度というのは、症例数が少ない疾患や重篤で有効な治療法が少ない疾患の治療薬を対象に、発売後に有効性・安全性の評価を行うことを条件に承認する制度のことです。
条件付き早期承認制度は2014年に創設された制度で、発売後の評価の結果次第では承認が取り消されることもありますが、第三相臨床試験を実施せずにとにかく早く承認される制度で、有効な治療法がない疾患を抱える患者さんにとっても希望を持つことができる良い制度だと思います。
アメリカではRM-1929は2015年4月にFDAの認可を受けてフェーズ1の臨床試験に入っていますが、2017年からフェーズ1を開始した国内がこの制度のおかげで逆転して承認される可能性があります。
RM-1929(ASP-1929)はセツキシマブ サロタロカンナトリウムという一般名で、抗ヒトEGFRモノクローナル抗体のセツキシマブにIR700という光感受性物質を結合させた抗体色素複合体です。
これを人に投与した後、イルミノックスと呼ばれるレーザー照射システムで近赤外線を照射すると、IR700が化学反応を起こしてがん細胞だけがものの1~2分で破裂するという治療法です。
一般的な抗がん剤と比べると副作用も少ないですし、アメリカで実施された頭頚部がんの治験では、15人中14人でがんが縮小したと報告されています。
この治療法のスゴイところといえば、肝心なのはIR700という近赤外線に反応する化学物質であり、がん細胞だけに結合する分子標的薬であればどの薬剤でもよい可能性がありますし、頭頚部がんだけでなく分子標的薬が結合することができるあらゆるがんに効果がある可能性があるところではないでしょうか。
また、身体への負担も少ないので何度でも繰り返し治療ができるとも言われています。
しかも、従来の治療に比べて圧倒的に費用が安く、がんの状態によっては外来での日帰り治療もOKというので、とても画期的ですね。
光感受性物質や近赤外線照射を調節することにより、患者さんの状態に合わせて強度を調節することも可能な気がします。
今までありそうでなかった治療法ですね。
この治療法が承認されて臨床でも有用性が確認されてくれば、がんだけでなく他の疾患にも応用できそうな気がしますね。
その先駆けが新規に医薬品業界に参入した日本のIT企業である楽天というのはなんだか誇らしいです。
楽天メディカルはどんな会社?
もともとは楽天の三木谷社長のお父さんがすい臓がんを患ったことから、お父さんのために有効な治療法はないかと探してたどり着いた治療法で、三木谷社長が個人資産で治験をするためのお金を出資して始まったそうです。
この治療法を開発していたのはアメリカのNCI(米国立がん研究所)の主任研究員で日本人の小林久隆先生です。
小林先生は京都大学で放射線科医だったのですが、臨床でがん患者と向き合ううちに従来のがん治療に限界を感じて研究者としてNIH(米国立衛生研究所)に渡り、がん細胞だけを攻撃する治療法を30年にわたって研究し続けた結果、光免疫療法を発見したそうです。
しかし、当時NIHではなかなか予算がつかず、前臨床試験を行うことが難しい状況でした。
ちょうどそこで楽天の三木谷社長と小林先生が出会い、三木谷社長が個人で数億円をパッと出資したところでこの治療法が治験実施に向けて動き出したのです。
三木谷社長は同時に、アメリカのカリフォルニア州で2010年に創業したアスピリアン・セラピューティクスにも個人的に出資し、同社の取締役会長に就任しています。
いわば、三木谷社長がNIHの小林先生が開発する光免疫療法とバイオベンチャー企業のアスピリアン・セラピューティクスを引き合わせ、開発を加速させてきたんですね。
アスピリアン・セラピューティクスは楽天アスピリアンに社名を変更し、現在はさらに楽天メディカルに変更されています。
日本の楽天のイメージがありますので日本企業のようですが、アメリカで登記された会社を買収して創業されていますので米国企業になるんですね。
光免疫療法の日本での上市に向けて既に日本法人も立ち上がっていますが、それは日本支社になります。
MRもたしか去年の年末ごろから募集されていたと思いますが、JACが取り扱っていましたね。
会社規模的には、他者と共同プロモーションする可能性もあると思いますが、楽天でこの治療法のプロモーションをしてみたい!と思う方はJACに相談してみるといいかもしれません。
まとめ
日本トップクラスの企業を経営しながら、父親の病気のために世界を飛び回って新しい治療を探し、私財を投じて新しい治療法の開発に参加し、ベンチャー企業も買収して医薬品業界に参入してしまう三木谷社長のバイタリティーには驚かされますね。
残念ながら三木谷社長のお父様の治療には間に合いませんでしたが、9月に承認されれば今年中には販売が開始され、今まさに頭頚部がんで苦しんでいる患者さんの希望になれば良いなと思います。
また、がんの治療の進歩にもつながる画期的な治療になる可能性がありますので、いちMRとしても注目していきたいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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