私は大学卒業後、新卒で旅行代理店に入社しました。
その後、外資系製薬会社への転職を経て、現在までに3度MR職で転職しました。
他業種から1度、MRで3度と、合計で4度の転職をしていることに対して 「ジョブホッパーじゃないのか」とか、 「我慢ができないヤツなんだな」 というご意見も聞こえてきそうです。
しかし、自分なりに将来の環境を予測し、そのために必要な転職をしてきたため1度も後悔することはありませんでした。
だからこそ、自らにとって転職が必要かどうか迷っている方のために、 私がMRとして転職を決断してきた3つの理由をお伝えしたいと思います。
理由1.担当領域によるMRの価値がちがう

1つめの理由は、「MRは担当する領域によって価値が違う」ということに気付いたからです。
日本のMR数は2013年の65800名をピークとして、その後は減少し続けています。
MRの方は実感が湧くと思いますが、多くの会社で早期退職の募集をしていたり、外資系企業ではリストラを進めています。
なぜでしょうか。
それは、どこの企業も現状の製品ラインナップと開発パイプラインからマーケット分析をした結果、もうこんなに多くのMRは必要がないからなのです。
接待禁止時代のMRの価値
つい5~6年前までMRは事実上接待が可能でした。
事実上と記したのは、当時から公取協の公正競争規約で「接待」は禁止されていたからです。
禁止されていなかったのは「軽微な接遇」であり、ささやかな食事でしたが、なぜか限度額は¥15000程度でした。
¥15000というのは社会通念上あきらかに「ささやかな食事」ではありませんよね。
おかげで、余裕で豪華な接待が可能だったのです。
この事実上の「接待」が禁止になったのは、2011年にアストラゼネカ社が自主的に社員による接待を禁止したことがきっかけでした。
その後、公正競争規約が改正され接待は完全にできなくなりました。
禁止されるまで、接待はMRが営業成績を達成するために重要な仕事の一つであったことは間違いありませんでした。
MRの重要な仕事の一つだった接待が禁止されると、それまで接待ができることによって麻痺させられていた疑問が自分の中で大きく膨らんできました。
「医療従事者は私を本当に必要としているのか?」
「顧客は私が接待をしてくれるから相手をしてくれていただけではないだろうか?」
「接待をしたことによって処方された自社製品はその患者さんにとって本当にベストの選択だったのか?」
プライマリー領域MR不要論
接待禁止によって私が考えていた近い将来の予測はほぼ確信に変わりました。
それはこのような予測です。
「近い将来、ほとんどの会社のプライマリーケア領域MRは正社員ではなくなる。」
これは5年以上前に出した予想ですが、現在特に外資系企業においてこの予測はほぼ現実となっており、各企業のプライマリー領域MRは削減が続いています。
会社によっては、営業所ごとCSO(コントラクトMR)との契約を結んでいるところもあります。
都市部では、MR不要論を唱えている著名な医師や薬剤師も出てきています。
これには、今まで高い売り上げを上げてきたプライマリー領域の製品の多くが特許切れになり、企業がコストを削減する必要を迫られているという背景もあります。
複合的な要素が重なり、プライマリー領域MRは 今後も削減されていくでしょう。
プライマリーケア領域の医薬品というのは、その疾患で苦しむ患者さんにとって必要な製品であることは確かです。
しかし、その医薬品を使用してほぼ同じ結果が得られる競合品が他にも数多くある場合は製品間の差別化が非常に些細なものになってしまう領域でもあります。
1人の患者さんにAという製品を使っても、Bという製品を使ってもほぼ同じ有効性・安全性が得られるのであれば、患者さんにとって重要でない小さな小さな差を訴えて営業することに社会的な価値があるのだろうか?
優しい医師の厚い人情を利用して、必死にお願いして自社の製品を処方してもらうことは、処方される患者さんにとってベストなのだろうか?
そんな疑問が自分の中で大きくなっていきました。
今後価値が高いのはどんなMR?
プライマリー領域MRの削減傾向は今後さらに強まっていくことが予想されます。
当時、プライマリー領域MRだった私は将来に強く不安を抱きました。
このままプライマリー領域MRを続けていたら、どんなに頑張っても淘汰される側に回る可能性の方が高いと感じました。
当時、私の営業成績はかなり良好でしたが、不可避の業界的な波を前に早期に決断する必要がありました。
それは、「転職によってスペシャリティ疾患製品の選任MRへとキャリアチェンジする」ということでした。
私は未だ治癒が難しく、かつ多くの製薬企業が最も開発に注力している領域として「オンコロジー領域」に絞ってMRの転職活動をしました。
今ではプライマリー領域からオンコロジー領域に転職することはそれなりに難易度は高いのですが、当時はオンコロジー領域の専任MRを拡大している企業も多かったことも幸いし、私は大手外資系製薬会社にオンコロジー領域MRとして内定を貰うことができました。
その疾患領域はほぼ未経験での入社でしたが、実際に現場を担当すると、それまでのプライマリー領域とは仕事の進め方や、医師など顧客からの反応がまるで違うことに驚きました。
医師や薬剤師など多くの医療従事者から卸のMSまで製品の情報提供を求められるのです。
やはり、その疾患で苦しんでいる患者さんにとって新しい治療が可能になる製品は営業にも自信や情熱を持てますし、社会に貢献しているという実感が持てます。
医師や薬剤師の先生方からも製品の情報提供を求められるということはニーズが高い仕事ということになり、同じMRでも情報提供を必要とされない製品領域のMRより社会的に見ても企業的に見ても価値が高いMRということになります。
そうです。
今後は、「プライマリー領域を広く浅く担当するMR」の価値が低下し、「スペシャリティ領域専任MR」の価値が高くなっていきます。
エージェントの方も皆さん口を揃えておっしゃいますが、既に数年前から転職市場ではその傾向は顕著です。
価値に差が出るということは、当然年収にも差が出てきます。
これが私の1つ目の転職理由です。
理由2.MRは転職組が有利な時代になった

2つ目の理由は、「転職をすることが不利な時代は過ぎ去った」ことに気付いたからです。
転職をしない人は未だに、「転職することは出世や昇給に不利になる」と思っている人も多いみたいです。
確かに、ごく一部の会社では営業所によっていわゆる「外様」を排除しようとする理不尽な仕打ちを受けることも聞いたことはあります。
しかし大多数の企業で転職組はもはや少数派ではなくなっており、むしろ外からの人材に大きく期待して採用しています。
新卒入社組が有利という神話の崩壊
私が大学生の頃はまだ、新卒採用募集の際に「将来幹部候補となる新卒採用の募集です!」と書かれた企業も珍しくありませんでした。
外資系企業でもそんなふうに書いてました。
その頃は日本企業、というより日本人の雇用の考え方として終身雇用制度を元にした「幹部は新卒生え抜きの叩き上げ」「中途社員は足りない人員の一時的な補充」というのが一般的でした。
一方、欧米の雇用の考え方はというと、そのような考え方は全くありません。
社員はより良い条件の雇用を求めて転職することは当たり前のこととして認知されており、それに合わせて雇用も活発に行われているため幹部候補は新卒社員が中心などという慣習はどこにもありません。
私は転職をする前からエージェントの方と何年も情報交換をしていましたが、転職した人が実際に活躍されて出世や昇格をした事例を数多く聞いていました。
日本において再び終身雇用制度や新卒入社の特権が復活するということは考えられず、欧米先進国のように雇用が流動化することは今後も進んでいくことはほぼ確実です。
このようなことから、「新卒ブランド」を捨てることに躊躇する必要はないと考えられます。
私の場合、製薬業界には中途入社で参入しているため転職をするのに新卒ブランドを気にすることはありませんでした。
しかしながら、転職がキャリアにとって不利になる時代は終わり、むしろ現状に満足することなくチャレンジを続けてきたことで有利に働く時代になってきたのです。
これが私の2つ目の転職理由です。
もちろん、現状に不満があって転職するというのはいわゆる「ジョブホッパー」と言われる人たちで印象は悪くなりますので、チャレンジの気持ちを持った転職を心掛けてください。
理由3.転職によって年収の大幅アップが可能になる

3つ目の理由はやはり「待遇面」ですね。
頑張って成果が出たら正当な評価をしてほしいというのは誰もが思うことだと思います。
終身雇用制度の名残がある日本の昇給制度
日本では、大学などで専門的に学んで知識を習得している人も非専門の人も同じ年に入社したら初任給は一律20万円前後というのが通常ですが私はこれに違和感を感じます。
会社は若くて活動量の多い20代の若いMRの年収を低く抑えてあまり働かなくなった年配のMRは高給のままです。
これも終身雇用・年功序列賃金制度の名残ですね。
しかし、今の時代に年功序列の賃金制度を続けていては企業としての競争力はなくなりますので、今後はさらにペイ・フォー・パフォーマンスの報酬制度が浸透していくと思います。
新卒でも一律20万円前後で皆同じ月給というのではなく、それまで取得してきた資格や研究成果などによって初任給が違ってくるようにもなるでしょう。
少子高齢化の中で良い人材を獲得するためには当然の流れだと思います。
なぜMRは転職すると年収が上がるのか
日本の昇給制度において、20代MRがガンガン良い成績を上げているからといって年収が1年で10%も20%も上がるということはほとんどありませんよね。
それが転職市場になると、20%、30%上がることはザラにあります。
ただ、内資系企業よりも外資系企業の方が<高い年収を提示されることが多いようです。/span>
ですので、今後も転職で年収をアップさせたいという方は外資系企業をおススメします。
最近では、バイオベンチャー系の製薬企業で30歳前後でも1000万円以上の年収を提示されるケースがあるようですから。
なぜ外資系の大手企業よりも、ニッチな領域で活躍するバイオベンチャーが 高い年収を提示するのでしょうか。
日本で既に有名な大手製薬企業はどこも優良企業です。
そのため、年収は横ばいでも就職したい人はたくさんいるのです。
しかし、まだ有名でないベンチャー企業にとって優秀な人材を集めるのは簡単ではありません。
募集をかけたものの、目標人数に満たないことも多いようです。
新薬承認を目前に控え、期限も迫っていて人数も確保したいなら高い年収を提示してでも経験豊富で優秀な人を採りたいのです。
だからこそ言えるのは、高い年収を提示する企業が必要とするMRにスキルアップしておかなければならないということです。
ところが、プライマリー領域をやっていてそのようなバイオベンチャー企業に転職するのはかなり困難です。
なぜなら、求められているのは「即戦力」であり、育成が必要なMRは内定を取ることがなかなかできません。
長期的にスキルアップの計画を立て、転職エージェントに相談するということは絶対にやっておいた方がいいと思います。
まとめ
自分のやりたい仕事を見つけるため、自分の価値をもっと高く認めてもらうために転職をするのは当たり前の時代になると思いますし、実際すでにそうなってきています。
それに加えてMRは減少する時代になっていますので、生き残りをかけてモデルチェンジのため転職をする必要があると思います。
幸い、転職はキャリアにとってプラスに働く時代になりましたし、少なくはなりましたがまだまだ大幅に年収を上げることができる転職があります。
繰り返しになりますが、転職をするかしないかは別としてチャンスを逃さないために少なくともエージェントとはコンタクトをとっておくべきですよ!

DODAはエージェントの方が熱心にサポートしてくれます!
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