こんにちは。
現役MRのリョウタです。
日本人は少し前まで終身雇用制度、年功序列制度が機能していたために、定年退職まで同じ会社に勤めていられるのが当たり前という感覚になっています。
日本以外の国の多くにとってその感覚は異常であり、リストラされて職を失うことも転職することもそれほど特別なことではないという感覚です。
日本も少しずつ終身雇用制度が機能しなくなってきていることを感じている方は多いと思いますが、今30代や40代の現役サラリーマン世代にとって60歳や65歳の定年までは20年~30年の時間があります。
変化が激しい現代で、20年後も同じ会社に勤められるのでしょうか。
今回はその件について考えてみたいと思います。
目次
およそ20年前のMRを取り巻く状況
今から20年後どうなっているかを予想するなら、これまでの20年間でどのくらいMR業界が変化してきたかを考えてみたいと思います。
MR認定試験が導入された直後
20年前と言えば、ちょうど西暦2000年で私もまだ社会人にはなっていませんでしたが、MRとしてはまだ世間にまともに認知されていなかった頃だと思います。
MR認定試験制度はイギリスで1968年に導入されていますし、西ドイツで1978年、フランスでも1993年に導入されています。
それに対して日本でMR認定制度が導入されたのは1997年で、第1回のMR認定試験が行われたのもこの年です。
日本では、MRがつい二十数年前まで認定試験で勉強するような基礎知識もたいしてないままに営業活動をしていたんですね。
今のようにコンプライアンスもたいして重視されていませんでしたし、どの会社も営業経費がバンバン使えましたので、とにかくたくさん経費を使って昼夜逆転の生活を送る体力がある人が優秀なMRとされていました。
MR数が激増していた
MR数は2013年をピークにしてその後は減少し続けていますが、2000年前後は毎年激増してました。
プライマリー領域の新薬がラッシュだったこともあって、各社がMRを大増員していましたからね。
外資系大手は新卒採用で200名~300名は当たり前でした。
特に、カルシウム拮抗薬のノルバスク、スタチンのリピトール、抗菌薬のジスロマックと大型新薬が急成長していたファイザーは年間800~1000名という感じでMRを増員していて、中途採用では社会人なら誰でも入社していた感じでした。
転職の募集も今とは比べものにならないくらいたくさんの案件が常にあって、外資系なら一通りの会社が年中募集していたそうです。
グローバルの製薬企業ランキングの変化
20年も経過すると、グローバルの製薬会社の売上高ランキングにも変化があります。
2000年と2019年の世界ランキングをまとめてみました。
まず20年前の2000年の世界売上高ランキングです。
【2000年の製薬企業世界売上高ランキング】
順位 | 会社名 | 国 | 売上高(百万ドル) |
1 | グラクソ・スミスクライン | イギリス | 23,043 |
2 | ファイザー | アメリカ | 22,567 |
3 | メルク | アメリカ | 20,225 |
4 | アストラゼネカ | イギリス | 15,408 |
5 | アベンティス | フランス | 15,159 |
6 | ブリストル・マイヤーズスクイブ | アメリカ | 14,400 |
7 | ノバルティス | スイス | 12,138 |
8 | ジョンソン&ジョンソン | アメリカ | 11,954 |
9 | ファルマシア | アメリカ | 10,824 |
10 | アメリカン・ホーム・プロダクツ | アメリカ | 10,798 |
11 | イーライ・リリー | アメリカ | 10,180 |
12 | ロシュ | スイス | 9,929 |
13 | シェリング・プラウ | アメリカ | 8,346 |
14 | バイエル | ドイツ | 5,784 |
15 | 武田薬品工業 | 日本 | 5,735 |
16 | サノフィ・サンテラボ | フランス | 4,957 |
17 | ベーリンガー・インゲルハイム | ドイツ | 4,491 |
18 | シェーリングAG | ドイツ | 4,091 |
19 | アボット | アメリカ | 4,062 |
20 | アムジェン | アメリカ | 3,629 |
当時は合併したばかりのGSKが世界一の売上を叩き出していたんですね。
つづいて2019年です。
【2019年の製薬企業世界売上高ランキング】
順位 | 会社名 | 国 | 売上高(百万ドル) |
1 | ロシュ | スイス | 61,869 |
2 | ファイザー | アメリカ | 51,750 |
3 | ノバルティス | スイス | 47,445 |
4 | メルク | アメリカ | 46,840 |
5 | グラクソ・スミスクライン | イギリス | 43,102 |
6 | ジョンソン&ジョンソン | アメリカ | 42,198 |
7 | サノフィ | フランス | 40,466 |
8 | アッヴィ | アメリカ | 33,266 |
9 | 武田薬品工業 | 日本 | 30,200 |
10 | ブリストル・マイヤーズスクイブ | アメリカ | 26,145 |
11 | アストラゼネカ | イギリス | 24,384 |
12 | アムジェン | アメリカ | 23,362 |
13 | ギリアド・サイエンシズ | アメリカ | 22,449 |
14 | イーライ・リリー | アメリカ | 22,320 |
15 | ベーリンガー・インゲルハイム | ドイツ | 21,279 |
16 | バイエル | ドイツ | 20,120 |
17 | ノボ・ノルディスク | デンマーク | 18,296 |
18 | テバ | イスラエル | 16,887 |
19 | アラガン | アイルランド | 16,089 |
20 | バイオジェン | アメリカ | 14,378 |
ファイザー、メルク、GSK、ノバルティスといったメガファーマはお馴染みですが、2000年にトップ20に入っていた企業の多くがこれらのメガファーマに買収されて名前が消えているのが印象的です。
2019年にはシャイアーを買収した武田薬品が念願のトップ10に入っていますし、その他にも2000年にはランキングに入っていなかった企業がランクインしています。
また、売上高の数字の変化も衝撃的ですね。
2000年にトップだったGSKの売上高は約230億ドルですが、2019年のトップであるロシュの売上高は約619億ドルと、この20年間でトップの売上が3倍近く伸びています。
欧米のメガファーマが次々に誕生
2000年前後には世界的に巨大規模の合併が起こり、世界の製薬企業の勢力図が大変化しました。
有名なところでは、1996年にともにスイスのサンドとチバガイギーが合併してノバルティスが誕生しています。
また、1999年にはドイツのヘキストとフランスのローヌプーラン・ローラーが合併しアベンティスが誕生しました。
さらに同じ1999年にスウェーデンのアストラとイギリスのゼネカが合併してアストラゼネカが誕生し、2000年にともにイギリスのグラクソ・ウェルカムとスミスクライン・ビーチャムが合併しグラクソ・スミスクラインが誕生しています。
ファイザーは2000年にワーナー・ランバートを吸収し、さらに2002年にファルマシアも吸収しています。
今世界のトップ集団であるメガファーマが発足したのは約20年前だったということですね。
日本でも、2000年に三菱東京製薬とウェルファイドが合併し三菱ウェルファーマが発足しましたし、2002年に中外製薬がロシュ傘下に入りました。
近年でも数年に一度はグローバルで大きな合併が起こっていますが、2000年前後は特に合併が集中していましたね。
これからの20年ではどんな再編が起こるのでしょうか。
これからの20年で起こること
約20年前時点では、誰もMRが接待禁止になってパンフレットの内容しかまともに話せなくなるとは思わなかったでしょう。
また、毎年2000名以上MRが減少するようなリストラの嵐が吹き荒れることも予想できた人は少なかったでしょうし、トップ20に入るような製薬企業がこれほど買収されるとは思えなかったんじゃないでしょうか。
同じように、今から20年後も今の時点では想像もつかない状態になることがいくつもあると思います。
そこで、企業の合併などはまったく予想できませんが、これからの20年でMRに起こることについて勝手に予想してみたいと思います。
・MR認定試験は入社前に個人で受けるようになる
・MR数が3万人前後になる
・ほとんど医師や薬剤師しかMRになれなくなる
・欧米並みにクビが当たり前になる(労働法が大きく改正される)
・業界で日当の完全廃止(基本給に組み込まれるか課税手当になる)
・弁当提供の禁止(せいぜいお茶のみ)
完全に個人の想像の範疇ですので、たいした根拠はありません(笑)。
まず、MR認定試験は入社後に会社が親切丁寧に研修をして受けるスタイルから、新卒だろうが中途だろうがMRとして入社しようと思ったら個人で認定試験を受けないといけなくなると予想します。
これまで製薬会社はMRの拡大が必要だったのですが、これからはその必要はありませんので、会社で莫大な経費をかけてMR認定試験対策の研修を行う必要もなくなります。
また、他の記事でも書いているとおりこれからも国内のMRはまだまだ減少を続けていくと予想しており、よくて3万人前後、国内の医薬品市場の推移次第では2万人くらいまで減少しても不思議ではないと思っています。
その関係でMRの競争が激化し、専門医や薬剤師並みの製品・疾患知識があるMRが増えていき、外資系ベンチャーなどで高い報酬を出す会社では本当に医師免許を持ったような人が参入してくる可能性もあると思います。
そして、現行の雇用制度の見直しについては経団連の中西会長やトヨタ自動車の豊田章男社長が公の場でコメントしており、正社員を解雇することが極めて困難な今の労働法を改正する流れになるかもしれないと思っています。
そうなると、日本でも欧米のように営業成績が悪いMRが日常的にクビになる日が来るかもしれません。
日当や説明会の弁当の廃止は既定路線ですね。
まとめ
上記のような事を予想していくと、製薬業界もますます変化が大きくなっていく可能性が高いですので、20~30年後はこれまでの20年間のように無事に定年退職できるMRはいったい何割くらいいるんでしょうかね?
私は1割か2割くらいではないかと思っています。
とても巡り合わせや運に恵まれた人くらいになると思います。
あとは自分から転職するかクビになるかということが必ず起こってくるので、新卒から入社した会社で定年退職なんてとんでもないという時代になっているんじゃないでしょうか。
今の会社のまま20年以上過ごすことができる方向に進む要素は何一つないですね。
20年前に今の状況を予想できた人はほとんどいなかったと思いますが、今自分たちが20年後を全く予想しないで思考停止してMRを続けていくということは20年前よりもはるかに危険な行為だと思います。
定年まで勤められることはまずないという前提で人生を設計していくことをおすすめしますよ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
コメント
定年までは厳しいかもしれませんね。。。個人的にはアステラス、第一、大塚、エーザイならば、定年までいける可能性は高いと思います。一方、外資系、国内中小はまず厳しいと思います。
Ayushiさん、コメントありがとうございます!
やっぱり大手は余裕がありますからね。
今の30代や40代は若い頃は年功序列色が残っていたからバリバリ売り上げをあげてもたいして給料が上がらなかったのに、フットワークが重くなるこれから先に今の40代、50代のように高給がもらえなくなる可能性があるので一番損する世代かもしれないですね。
本当に自分からお金を稼げる力を身につけていかないといけませんね。
ホントですね。。給料改定で下がっていく一方です。。次作も楽しみにしております。