こんにちは。
現役MRのリョウタです。
シクレソニドといえば今話題の薬剤の1つですよね。
そう、あのダイヤモンドプリンセス号で感染した新型コロナウイルス感染症の重症化例に使用されて症状が改善し、効果があるかもしれないと言われているやつです。
製品名は「オルベスコ」で気管支喘息に使用される吸入ステロイド製剤ですね。
ダイヤモンドプリンセス号で感染が拡がったときはまだ新型コロナウイルスについても何が何だかよくわからないときでしたが、どんなウイルスかも分からない、治療薬もない中で重症の患者さんに喘息治療薬を選択して改善させたお医者さんはウルトラCと言えるんじゃないでしょうか。
今回は、今も臨床使用に向けて試験が行われているシクレソニドについて記事にしました。
シクレソニドってどんな薬?

海外ではシクレソニドはアレルギー性鼻炎の治療薬としても販売されている製品がありますが、日本では吸入ステロイド喘息治療薬のオルベスコのみが発売されています。
開発したのはドイツのアルタナファーマという会社ですが、2007年にスイスのナイコメッドに買収されてその後この会社も2011年に武田薬品に買収されています。
日本でオルベスコの開発は帝人ファーマが行っており、2007年に発売されています。
当時、帝人が販売開始したときのことを少し覚えているのですが、たしかプロドラッグで肺に到達してから活性化するから安全性が高いというのと、吸入ステロイド薬として当時初めての1日1回投与の製品ということをウリにしていたと思います。
エアゾール製剤でドライパウダーではないため、粒子が細かく肺への送達率が高いことから効率的に患部に届くというのも良い特徴でしたね。
不運なことに同効薬として世界でブロックバスターになっていたグラクソスミスクラインのアドエアが同時に発売になったため目立ちませんでしたが、それでも1日1回という利便性や安全性で差別化でき10%前後のシェアは取っていたのではなかったかと思います。
当時から、オルベスコは喘息に使う吸入ステロイドという認識しかありませんでしたが、まさかここへ来て新型コロナウイルスのしかも重症例に顕著な効果を示すとは驚きです。
ダイヤモンドプリンセス号で感染した症例に投与されたと発表されたときには、肺の抗炎症作用を狙っての投与かと思っていましたが、直接的な抗ウイルス作用とのハイブリッド作用を狙ったものだったのですね。
じつは、シクレソニドにRNA複製阻害作用があることはけっこう知られていたみたいですね。
新型コロナでもロピナビル・リトナビル(商品名:カレトラ)が各国で使われていますが、シクレソニドのウイルスRNA複製阻害作用はこのロピナビルと同等かそれ以上あるそうです。
カレトラには下痢や腹痛といった副作用が少し高めの割合で出ているのですが、局所ステロイドのオルベスコでは副作用の発現率も少ないようです。
今回のダイヤモンドプリンセス号のシクレソニド投与例は3名とも割とご年配の方だったことも考慮されたのだと思うのですが、それにしても重症例を目の前にして数ある薬剤の中から投与されたこともないオルベスコを思い切って選択された神奈川県立足柄上病院の岩渕敬介医師の決断力は本当にすごいですね。
今の開発状況はどうなっているのか

シクレソニドにコロナウイルスに対する抗ウイルス作用があることは、フサンやフオイパンなどの膵炎治療薬に抗ウイルス作用があることを突きとめた国立感染症研究所の松山州徳室長が同様に突きとめていたんですね。
松山室長は、シクレソニドが新型コロナウイルスのもつ非構造領域タンパクのNSP15に作用してRNA複製を阻害するということ、しかもin vitroでロピナビルと同等以上のウイルス増殖抑制作用を示したがシクレソニドはプロドラッグであり肺細胞に到達したときには組織濃度が数十倍になっていること、他の吸入ステロイド薬には抗ウイルス作用はなく、シクレソニドのみが持つ作用であることなどを報告されています。
神奈川県立足柄上病院でシクレソニドが投与されると海外でも注目が集まり、特に韓国では軽症患者を中心に臨床試験が始まっています。
日本でも日本感染症学会が中心となって学会員に症例登録を募り、24施設から85症例が登録され観察研究が実施されています。
中間報告では良好な結果が得られており、期待が高まりますね。
まとめ

ただの吸入ステロイドだと思っていたシクレソニドにこんなスゴイ抗ウイルス効果があったなんて本当に驚きです。
ウイルスの増殖を抑えながら炎症も抑えるので非常に効率的に治療ができる薬剤ではないでしょうか。
しかも局所ステロイドでプロドラッグですので安全性が高いですし、古い薬剤ですので薬価も低いです。
臨床試験で良い結果が出れば、政府は法律にこだわっていないで迅速に承認してほしいですよね。
世界的な緊急事態に適切に例外を出せるのも政府がやるべきことだと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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