こんにちは。
現役MRのリョウタです。
MRのブログを運営する者としては取り上げないわけにはいかないビッグニュースが出てきました。
昨日、英国の大手製薬企業アストラゼネカが米国のバイオ製薬企業ギリアド・サイエンシズに対し買収を提案したと各社が報じていますね。
もしもこの合併が成立すれば、世界5位の製薬企業が誕生しますが、果たしてギリアド社はこの提案に応じるのでしょうか。
大手ならどこも欲しがる魅力的な企業
年間の世界売上高ランキングではアストラゼネカが11位($24,384M)、ギリアド・サイエンシズが13位($22,449M)と同規模です。
ですが、株式時価総額に関してはアストラゼネカは1,400億ドル(15兆円)であるのに対し、ギリアド・サイエンシズは960億ドル(10兆円)とアストラ社が1.5倍の時価総額になっています。
つまり、アストラゼネカが割高なのか、ギリアド・サイエンシズが割安かなのですが、巷で言われているのはギリアド社の価値が割安だということですね。
実際、2020年6月現在のアストラ社の株価収益率(PER)は約100倍、ギリアド社は約20倍です。
PER100倍というのはつまり100年分の収益を見込んだ株価がついているということですから、今の収益力に対してものすごく高値で取り引きされているということです。
また、企業がどのくらいの利益をあげているのかという観点から営業キャッシュフローをみてみると、アストラゼネカの過去12ヶ月の営業キャッシュフローはおよそ35億ドルだったのに対し、ギリアド・サイエンシズはなんとおよそ90億ドルもあります。
営業キャッシュフローは実際に入ってきている現金の流れを表していて、企業活動によって得られた収入から外部への支出を差し引いて手元に残った現金を見ているので、リアルな現金収入を見ることができます。
それがアストラ社とギリアド社では3倍近くもの差があるということですね。
ちなみに世界10位のブリストルマイヤーズスクイブの営業キャッシュフローは去年大きく伸びて80億ドルほどでしたので、ギリアド社は同規模の企業の中でもかなり高い営業キャッシュフローを得ている企業ということになります。
しかも、ギリアド社は現在も3兆円近くの現金を保有しており、これはキャッシュ・リッチなヘルスケア業界の中でもトップクラスです。
これだけ経営状態が良いギリアド社なら、トップ10のメガファーマなら欲しいと思っていてもある意味当然なんじゃないでしょうか。
合併は成立するのか
ギリアド社は大手企業との合併には関心がなく、小規模な企業の買収や提携にフォーカスしているとしています。
また、新型コロナウイルス関連でいうとアストラ社はワクチンを開発しており、ギリアド社もレムデシビルを上市しているということで、このタイミングでの両社の合併は政治的にもデリケートになるため合併を疑問視されています。
このあたりのポイントでみてみると、実際に合併が成立する可能性は低そうな印象を受けますが、本当にそうなのでしょうか。
私もブルームバーグから報道された時にはアナリストのコメントなどにあるように可能性は低いかなと思いました。
しかし、両社の財務諸表についてみてみると、特にアストラゼネカの財務諸表について他社と比較してみると、狙いがなんとなく見えてきました。
アストラゼネカの狙いは間違いなくレムデシビルなどではなく、バランスシートの改善ではないかということです。
営業キャッシュフローが高く、キャッシュリッチでそのうえ株価が割安なギリアド社は買収にうってつけだと判断したのではないでしょうか。
パイプラインについては、今は大型化が期待できるものがあまり多くはない状況ですが、これほど経営状態が良くて安値の会社は世界中見渡してもそう多くないため、買収の提案をしたのだと思います。
あくまで推測ではありますが、ギリアド社がある程度の買収金額を提示してもお買い得な会社であることを考えると、提示金額によっては成立する可能性も出てくるのではないかと感じます。
ただ、それはアストラゼネカだけが知っていることではなく、当然ながら他のメガファーマも承知しているでしょうから、もしも交渉が進展しそうなら、みすみすアストラ社に持っていかれるくらいならと手を上げる会社が出てくる可能性もあると思われます。
アストラゼネカは英国の企業ですので、同じ米国のファイザーやメルク、ジョンソン&ジョンソンなどがホワイトナイトとして出てくることも考えられますね。
まあ、ギリアド社の大株主には元会長のドナルド・ラムズフェルドや元国務長官のジョージ・シュルツなど大物政治家が名を連ねていますし、その他にも名だたる大手ファンドが投資していますので、結局のところは株主の承認を得られるかどうかというところにかかっているのだとは思います。
可能性は低いという意見が大半だが・・・
ギリアド社としては、長い間エボラ出血熱の治療薬としてレムデシビルに投資し続けてきて、ようやく新型コロナウイルス治療薬として花開く時が来たところですし、その他にもHIVやオンコロジーのパイプラインに多額の投資を続けており、ようやく光が見えてきているところです。
いかに業績好調のアストラゼネカといえども、バランスシート改善の材料にされるのを簡単に了承するとは思えませんね。
ギリアド社は現在の株価が割安だという声が大半ですので、今常識的な金額での買収提案ならただの安売りになってしまうと考えるのが通常ではないかと思います。
ただ、そこは欧米の企業ですので、提案金額によっては成立してしまう可能性もあるとは思っています。
両社の主要領域もそんなにかぶっていませんので、相性としてもそう悪くはありませんし。
個人的にはギリアド社はHIVやHBVなどニッチな感染症領域に特化している会社で、他社があまり投資していないこの領域に並々ならぬ情熱を燃やしている貴重な会社ですので、他社に買収されてその領域への投資が疎かになってしまうとそれらの疾患で苦しんでいる患者さんの希望が損なわれてしまうことになってしまうことを考えると残ってほしい気持ちの方が大きいです。
今年一番のビッグニュースですので、今後どうなるのか非常に興味がありますね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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