こんにちは。
現役MRのリョウタです。
2020年も製薬業界はけっこうガッツリとリストラがありました。
少し前のMSDやサノフィやエーザイなんかのリストラはド派手だった印象がありますが、昨年も負けず劣らずでした。
公になっている希望退職だけでも5社くらいありましたね。
昨年は新型コロナで経済に打撃を受けましたが、製薬会社も決して影響なしということではないと思います。
製薬会社の業績への影響が見えてくるのは今年以降なのかもしれませんしね。
さらに、4〜5ヶ月の間MRを自宅待機にさせたメーカーが多かったですが、MRの活動状況の業績への影響について分析している企業もあるんじゃないかと思います。
実際、MRを長く自宅待機させて、大きく業績が悪化したメーカーは皆無だったでしょうね。
常日頃からKPIを注視している会社は、ここぞとばかりにMRの適正数について議論していても不思議はないです。
これまで以上にMR数を減らす根拠が増えてしまった印象ですが、2021年はMRの減少に歯止めがかかるのかどうか、これについて考えてみたいと思います。
MRはまだまだ多すぎる
2020年は5社の希望退職が公に発表されました。
特に印象に残ったのはやはり武田薬品の希望退職で、人数は400名とも500名とも言われています。
それだけの人数を一度に退職させると、現場は引き継ぎやなんやらで本当に大変だったんじゃないでしょうか。
業界最大手の武田薬品が大規模なリストラを実施したということは、同業他社も続いていく可能性が高いです。
そして、昨年メディアのインタビューを受けた大手製薬企業の経営トップは、ほとんどが「日本の市場は縮小していく。MRは多すぎるのでまだまだ減っていくだろう」という見解を示されていたことが印象的でした。
内資系製薬メーカーでは、MRを他部署へ配置転換させてなんとか雇用を維持しようという会社もありますが、リストラを決断する会社は今年も出てくると思います。
他部署も増員計画ありきならMRを配置転換させるのもいいのですが、雇用を維持させるためということであれば、社員に優しい会社である反面、国際競争力の点ではちょっと心配になります。
国内は基本的に市場が縮小していくことがほぼ決まっていますから、市場拡大期に必要だった人数を維持するのは非合理的だからです。
他にも、国内には経営の観点からMRを削減すべき要素がこのくらいあります。
【MR削減の要素】
👉国内の医薬品市場の縮小
👉薬価制度改革(医療費抑制)
👉後発品のさらなる普及政策(医療費抑制)
👉フォーミュラリーの浸透(病院経営改革)
👉公正競争規約の厳格化(医薬品販売情報提供活動ガイドライン)
👉ITの活用推進
新薬が出ていればこれらの要素があってもまだMRを減らさないでいいのかもしれませんが、しばらく新薬が出なくなった会社だと、相当厳しい環境になることが予想できます。
さらに、MRの1人あたりの生産性について見てみると、大手と言われるメーカーと中堅以下のメーカーではかなりの差があります。
下図は2019年の大手と大手以外のMR1人あたりの生産性一覧です。
2019年MR1人当たりの生産性(大手) | |||
会社名 | 売上高(百万円) | MR数 | 1人当たりの生産性(百万円) |
武田薬品 | 719,161 | 2000 | 3.99 |
第一三共 | 667,260 | 2180 | 3.06 |
中外製薬 | 514,166 | 1380 | 3.73 |
アステラス製薬 | 445,894 | 1700 | 2.62 |
大塚製薬 | 384,546 | 1320 | 2.92 |
田辺三菱製薬 | 348,366 | 1400 | 2.49 |
小野薬品 | 243,965 | 1050 | 2.33 |
協和キリン | 214,858 | 1230 | 1.75 |
エーザイ | 204,340 | 817 | 2.50 |
参天製薬 | 182,235 | 400 | 3.72 |
2019年MR1人当たりの生産性(大手以外) | |||
会社名 | 売上高(百万円) | MR数 | 1人当たりの生産性(百万円) |
久光製薬 | 140,992 | 470 | 3.00 |
旭化成 | 133,300 | 670 | 1.99 |
日本新薬 | 116,637 | 670 | 1.73 |
キョーリン製薬 | 109,983 | 750 | 1.47 |
持田製薬 | 101,799 | 740 | 1.38 |
科研製薬 | 89,232 | 725 | 1.23 |
キッセイ薬品 | 63,234 | 650 | 0.97 |
ゼリア新薬 | 60,426 | 270 | 2.24 |
日本化薬 | 47,774 | 400 | 1.19 |
鳥居薬品 | 42,998 | 300 | 1.43 |
大手と中堅では大きな差があります。
つまり、中堅のほうが単純に製品を販売するのにコストを掛けすぎているということがわかりますよね。
会社によって給料や福利厚生が違いますので一概には言えませんが、しかしこれだけの差があると、これからもずっとこのままというわけにはいかないんじゃないでしょうか。
そして、同様に大手と中堅の営業利益率を比較してみたいと思います。
まずは大手の営業利益率。
大手 | 2010年(%) | 2015年(%) | 2019年(%) |
武田薬品工業 | 25.9 | 7.2 | 9.8 |
アステラス製薬 | 12.5 | 18.1 | 18.8 |
第一三共 | 12.6 | 13.2 | 9 |
エーザイ | 14.7 | 9.5 | 13.4 |
中外製薬 | 17.5 | 17.4 | 30.7 |
小野薬品工業 | 26 | 19 | 21.5 |
大塚HD | 11.2 | 10.5 | 12.7 |
塩野義製薬 | 16.6 | 29.5 | 38.1 |
田辺三菱製薬 | 18.7 | 22 | 11.8 |
参天製薬 | 27.7 | 41.1 | 19.3 |
続いて中堅の営業利益率。
中堅 | 2010年(%) | 2015年(%) | 2019年(%) |
キッセイ薬品 | 10 | 14.4 | 8.6 |
キョーリンHD | 15.8 | 16.4 | 7.9 |
久光製薬 | 20.6 | 17.1 | 15.5 |
持田製薬 | 14.7 | 13.2 | 9.7 |
科研製薬 | 16.4 | 32 | 26.1 |
日本新薬 | 8.2 | 10.2 | 18 |
ゼリア新薬工業 | 6.7 | 7.3 | 6 |
ツムラ | 22.7 | 17.6 | 15.3 |
鳥居薬品 | 4.1 | 7.9 | 3.3 |
日医工 | 11 | 9 | 4.9 |
沢井製薬 | 21.3 | 18.8 | 14 |
東和薬品 | 20.9 | 13.6 | 15.2 |
日本ケミファ | 7.3 | 8.8 | 4.3 |
中堅でも営業利益率が高い企業はありますが、全体的には大手のほうが高い傾向にあります。
低い営業利益率であるにもかかわらず、製品を販売するためのコストを大手よりもかけている状態というのは、市場が縮小していく中でも維持することができるかというとそれは難しいと思います。
大手は何年も前から国内の人員を減らしたり、工場を手放したりして海外展開に力を入れており、それが最近実を結び始めています。
最近のニュースを見ると、ようやく中堅でも海外展開に注力し始める会社が出てきていますので、国内の人員を整理する雰囲気を感じているのは私だけでしょうか・・・。
まとめ
製薬業界は幸いなことに、新型コロナが経営を直撃して、すぐにリストラをしなければ危ういという業種ではないです。
それだけに、感染が拡大している今の状況でリストラすると社員が困るから、落ち着いてから実施しようと考えている会社もあるかもしれませんね。
いずれにしても、MRなら誰もが自分の会社で希望退職が発表されても驚かないようにしておかないといけないなとは思いますよね。
CSOも含めた転職のシミュレーションをしておくとか、副業をして自分の手でお金を稼ぐ力を磨いておくとか、準備と対策をしているかしていないかで将来明暗が分かれるかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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